人権の尊重

人権に対する基本的な考え方・方針

東京海上グループは創業時から、「お客様や地域社会の“いざ”をお守すること」をパーパスとしてきました。保険はPeople’s Businessと言われており、「人」が創り上げる「信頼」がすべての源泉です。お客様、社員、地域の皆様に信頼され、すべての人々の人権を尊重していくことは、当社がビジネスを行っていくために必要不可欠です。
保険会社として、当社は幅広い業種のお客様やステークホルダー、ライツホルダーの皆様との関わりを持っています。当社の社会への影響は決して小さいものではなく、人権尊重が大切であること、それを実践することが、お客様や社会と接点を持つ社員一人ひとりに浸透していなければなりません。そのために、東京海上グループは、世界人権宣言やOECD多国籍企業行動指針、ILO国際労働基準、国連「ビジネス人権に関する指導原則」、国連グローバル・コンパクト等の理念に基づき、「東京海上グループ 人権基本方針」「責任ある調達に関するガイドライン」を制定しました。
お客様や地域社会に安心・安全を提供し、リスクから守ることを使命とする当社は、自社が事業活動を通じて直接または間接的に人権に関してどのような関係を持ち、どのような影響を及ぼしうるかについて理解をする必要があります。そのために、グループ社員への教育・啓発を実施しながら、2022年度は人権リスクマップを策定し、日本における人権影響評価を実施し、優先順位が高く、喫緊に取り組むべき課題を明確にしつつ、その分野における実態把握と実質性ある対策の実行を進めています。
そして、人権に負の影響を及ぼす可能性がある場合は、それを予防するための措置をとり、あってはならないことですが、万が一問題が起きたときには現場から情報がトップに報告され、迅速に対処できる体制が必要です。そのために、東京海上グループは、社外のステークホルダーの皆様からの人権侵害に関するご不満やご要望の受付窓口を設置しています。詳細および連絡先はこちらをご覧ください。
外部環境が目まぐるしく変化する中、自社事業や広大なバリューチェーンにおける人権尊重のための体制は一夜にして構築できるものではありません。しかしながら、ステークホルダーやライツホルダーの皆様の声に耳を傾け、取り組む姿勢やプロセスを経営陣自らが議論し、社員一人ひとりが人権への感度をみがき、ビジネスパートナーの皆様とともに責任ある調達に関する取り組みを推進し、強い想いをもちながら一歩一歩着実に取り組みを進めることが、お客様や地域社会(地域住民)、さまざまな組織で働く従業員等の皆様からの「信頼」につながるものと確信しています。

東京海上グループの事業活動と人権への影響

東京海上グループの事業活動(事業領域)は、「保険引受・投融資」「バリューチェーン」「自社オペレーション」の3つに分類することができ、それぞれの事業活動(事業領域)におけるライツホルダー、人権課題(人権への負の影響等)および当社による主な対応は下表のとおりです。

また、東京海上グループの主要な事業活動は保険引受を通じたお客様や社会への安心・安全の提供です。保険業務フローにおけるライツホルダー、人権課題(人権への負の影響等)は下表のとおりです。

人権関連方針

東京海上グループでは、経営理念の実践にあたって、社会的責任の観点で求められる行動原則として「東京海上グループサステナビリティ憲章」を制定し、お客様、株主・投資家、代理店、取引先、社員、地域・社会および未来世代等のすべての人々の人権を尊重していくこととしています。”People’s Business”である保険事業を中核とする東京海上グループにとって、人権尊重はサステナブルな成長の土台となるものです。東京海上ホールディングスは、世界人権宣言やOECD多国籍企業行動指針、ILO国際労働基準、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、ISO26000を支持・尊重し、国連グローバル・コンパクトに署名しています。東京海上グループは、人権にかかる国際的な行動原則・ガイドラインを十分に理解し、社会的責任にかかるイニシアティブへの参加・貢献を通じ、持続可能な社会の実現に向けて役割を果たしていきます。

また、東京海上グループの社外のステークホルダーの皆様からの人権侵害に関するご不満やご要望の受付窓口を設置しています。詳細および連絡先はこちらをご覧ください。

「東京海上グループサステナビリティ憲章」(抜粋)

東京海上グループは、以下の行動原則に基づいて経営理念を実践し、社会とともに持続的成長を遂げることにより、「企業の社会的責任(CSR)」を果たします。

人間尊重

  • すべての人々の人権を尊重し、人権啓発に積極的に取り組みます。
  • 安全と健康に配慮した活力ある労働環境を確保し、人材育成をはかります。
  • プライバシーを尊重し、個人情報管理を徹底します。

「東京海上グループ 人権基本方針」

東京海上グループは、お客様の信頼をあらゆる活動の原点におき、企業価値を永続的に高めていくことを経営理念としています。この経営理念を実践するための基盤が、お客様、社会(取引先や市民社会組織を含みます)、社員、株主・投資家、未来世代等あらゆる人々の人権の尊重であり、当社は、あらゆる事業活動において、人権の尊重に取り組んでいます。「東京海上グループ 人権基本方針」(以下、「本方針」)は、これら経営理念および行動規範に基づき、バリューチェーン全体を含めたあらゆる事業活動における人権尊重を推進する姿勢を示すものです。
本方針において表明されている人権の尊重は、東京海上グループ各社の役職員(役員、社員、派遣社員などを含むすべての社員)の一人ひとりによって、実践されるものです。
また、ビジネスパートナーに対して、本方針において表明されている原則の支持と実践を期待し、協働して人権尊重を推進することをめざします。

  • 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等に沿った本方針は、2021年12月に東京海上ホールディングス取締役会で承認されました。

「環境・社会リスクへの対応方針」

東京海上グループは、環境基本方針・人権基本方針に基づき、環境・社会に対して負の影響を与えるリスクの適切な把握・管理に努めています。保険引受・投融資先における人権尊重を推進する取り組みとして、特定セクターにおける人権リスクの予防・軽減を評価する「環境・社会リスクへの対応方針」を2021年12月に制定しました。東京海上グループでは、保険引受先・投融資先の企業のお客様とともに、人権尊重の取り組みを推進しています。

「責任ある調達に関するガイドライン」

東京海上グループでは、ビジネスパートナーの皆様とともにバリューチェーン全体を通じて責任ある調達および調達慣行を推進し、安心・安全で持続可能な社会の実現と持続的な成長をめざすための行動規範として、「責任ある調達に関するガイドライン」を2023年3月に制定しました。東京海上グループでは、ビジネスパートナーの皆様に対して本ガイドラインを周知し、「公平・公正な取引」「人権尊重と労働」に関する国際規範の尊重や法令遵守、「地球環境の保護」への貢献、「情報セキュリティ」の徹底、「管理体制の構築と情報開示」の推進を要請することで、バリューチェーン全体を通じて人権尊重を含む責任ある調達および調達慣行を推進しています。

「東京海上グループ コンプライアンス行動規範」

東京海上グループは、お客様の信頼をあらゆる活動の原点におき、企業価値を永続的に高めていくことを経営理念とし、すべての人や社会から信頼される良い会社“Good Company”をめざして事業活動を遂行しています。「東京海上グループ コンプライアンス行動規範」は、この経営理念の精神や“Good Company”の実現に向けた具体的な行動をコンプライアンスの観点からまとめたものであり、東京海上グループのあらゆる事業活動において最優先されるものです。
東京海上グループ各社の役職員(派遣社員を含みます。以下同様とします。)は、この行動規範に則り、法令および社内ルールを遵守し、社会規範にもとることのない誠実かつ公正な企業活動を遂行し、事業活動に関係するルールを正しく理解し、厳正に遵守することにより、公正な事業活動を行わなければなりません。

推進体制

東京海上グループでは、人権リスクや人権課題を含むサステナビリティ課題への対応について、サステナビリティ委員会、経営会議における執行での議論・決定を経て、計画や取組状況が取締役会に付議・報告されます。取締役会の指示・監督の下、各関連執行機関が主体となって推進するガバナンス体制によって運営されています。

サステナビリティ委員会

人権を含むサステナビリティ課題への対応については、グループCEO、グループ人事総括(CHRO)グループD&I総括(CDIO)、グループサステナビリティ総括(CSUO)等をメンバーとするサステナビリティ委員会において、戦略・目標の策定、取り組みの調整・推進等について論議しています。
2022年度はサステナビリティ委員会を年4回開催し、人権尊重の取り組みについて議論し、取り組みの方向性を決定しました。

2022年度サステナビリティ委員会における報告・論議内容
  • 2022年4月 人権尊重の取り組みの2022年度年次計画
  • 2022年8月 人権デューディリジェンスの行動計画
  • 2022年11月 人権デューディリジェンスの2022年度下半期の取り組み
  • 2023年2月 下半期の取り組み振り返り

人権分科会

人権については、サステナビリティ委員会の下部組織として、東京海上ホールディングス 人事部・法務コンプライアンス部・経営企画部を常任メンバーとする「人権分科会」を設置し、人権分野の専門家の助言を得ながら、人権尊重の取り組みの検討および展開について論議しています。
2022年度は人権分科会を毎月1回程度の頻度で開催し、「責任ある調達に関するガイドライン」の策定、人権デューディリジェンスの取り組みの実施、東京海上グループならではの人権尊重の取り組みの企画・立案、進捗状況の確認および必要に応じた取り組みの変更等を行いました。

役員報酬制度

東京海上グループでは、2022年度から取締役および執行役員の業績連動報酬に、D&Iの推進・浸透を含むサステナビリティ戦略の主要課題についての非財務指標を取り入れています。めざす姿に対する進捗状況を指標とし、サステナビリティ委員会にて評価を行った後に、報酬委員会にて審議を行い最終決定しています。

人権尊重の周知・浸透

東京海上グループでは、人権リスクや人権課題への理解を深め、人権尊重の取り組みを推進するために、さまざまな人権尊重の周知・浸透の取り組みを行っています。

グループ内での人権尊重

グループ各社では全社員およびともに働くすべての人が差別やハラスメントのない活力ある企業風土を築いています。
東京海上日動では、毎年、年度初に「人権関連業務 基本方針・施策」を策定し、人権啓発推進体制のもと、全ての部店における人権関連業務の取り組みを支援し、年度末には各部店の取り組み状況の点検を行い、継続的にPDCAサイクルを回して状況調査、課題抽出、改善策の実行を行っています。

主な取り組み

  • 人権啓発研修(全社員受講)の実施と人権を意識した日常業務の実践
  • ダイバーシティ&インクルージョンの実現
    (社内ノーマライゼーションの実現、障がい者の雇用と定着の推進等)
  • ハラスメント防止の啓発と適切な対応
  • 公正採用選考
  • 代理店向け人権啓発の取り組み

人権啓発に関するモニタリングプロセス(東京海上日動)

  • 1.人権啓発の推進に向けた方針を策定し徹底する
  • 2.社長を責任者とする人権啓発推進の組織体制を整備する
  • 3.全役職員を対象とした人権啓発研修を年1回以上実施する
  • 4.公正採用選考の実施に向けた方針を策定し、徹底するとともに、「公正採用選考人権啓発委員」を設置する
  • 5.ノーマライゼーションを推進する(障がいのある社員の積極採用およびソフト・ハード両面の職場環境の整備)
  • 6.職場におけるハラスメントの防止に向けた規定を策定し、社内相談窓口を設置する
  • 7.代理店における自主的な人権啓発の取り組みを依頼し、支援する

人権啓発研修

グループ各社では、毎年、全社員およびともに働くすべての人が受講する職場内での人権啓発研修やe-Learning研修等を実施し、人権基本方針を周知し、差別やハラスメントのない活力ある企業風土を築いています。研修は、社会課題を反映したテーマで行い、同和問題、ノーマライゼーション、LGBTQ+、ハラスメント、在留外国人やSDGs等、数々の人権問題を広く学んでいます。
東京海上日動では、人権啓発全店推進本部、各部店推進委員等による推進体制を設置し、毎年「職場内人権啓発研修」のほか役員セミナーや階層別研修を実施しています。加えて、代理店に対してもさまざまな研修ツールを提供し、人権啓発研修の実施を支援しています。

「人権標語」の募集・表彰制度等を通じた人権尊重文化の醸成

グループ各社において、毎年12月4日~10日の人権週間にちなみ、職場・家庭・地域社会において、人権尊重の重要性について理解を深め、人権意識の高揚を図ることを目的に、東京海上グループ全社員および家族を対象に「人権標語」の募集を行っています。入選作品については、社内イントラネットとグループ報および各職場にポスターを掲示して人権尊重意識の浸透を図っています。

人権の視点を意識した日常業務の実践、差別事象を看過しない対応の徹底

東京海上日動では、お客様向けに発信する広告や保険募集文書を含め、日常業務においても人権尊重の観点から問題となる表現(イラスト、写真・動画を含む)や文言がないか、必要のない個人情報を取得しているようなことはないかを確認する文書点検体制を整えています。また、差別事象を発見した場合や遭遇した場合の対応ルールを定め社内への周知を行うことで適切に報告・対応を行える体制を整えています。

ホットライン(内部通報窓口)

コンプライアンス違反またはそのおそれのある事案も含め他対応については、サステナビリティレポート詳細編P.137以降の「ホットライン制度(内部通報制度)」を、お客様の窓口についてはサステナビリティレポート詳細編P.122以降をご参照ください。

法務・コンプライアンス関連教育

2022年度に、主要な海外グループ会社の法務・コンプライアンス部門の責任者が参加するGlobal Legal & Compliance Conferenceにおいて、社外の専門家を招き、人権に関する国際的な規制動向や、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等について講義を実施し、参加者の知見向上を図りました。

サステナビリティ研修

東京海上ホールディングス、東京海上日動およびその他の主要グループ会社では、毎年、全社員およびともに働く派遣社員や委託業者の社員等を対象に、e-Learning等によるサステナビリティ研修を実施しています。研修では、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、国内外における人権デューディリジェンスの動き、人権基本方針、環境・社会リスクへの対応方針、責任ある調達に関するガイドラインを周知する等して、人権課題への理解浸透を図り、主体的な人権課題の解決に向けた取り組みを促しています。

「責任ある調達に関するガイドライン」の浸透

東京海上グループは、2023年3月に「責任ある調達に関するガイドライン」を制定・公表し、ガイドラインのグループ会社社員やビジネスパートナーへの浸透に取り組んでいます。東京海上ホールディングスおよび主要グループ会社のホームページにガイドラインについて掲載するとともに、グループ会社の社員や主要なビジネスパートナーの皆様に対してガイドラインを周知し、人権や労働に関する国際規範の尊重や法令遵守を要請する取り組みを進めています。
また、東京海上日動では、社会的責任の観点から、取引先(調達先・業務委託先)に「取引における行動指針」を交付し、人権尊重に関連する領域を含め、「法令等・社会規範の遵守」「公平・公正な取引の推進」「情報管理の徹底」「環境への配慮」への取り組みを要請しています。

人権デューディリジェンス

東京海上グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権デューディリジェンス(人権DD)の仕組みを構築しています。
東京海上グループにとって、人権DDとは、企業活動の人権への負の影響を防止・軽減するための予防的かつ主体的な「良い会社」になるための継続的なプロセスのことをいいます。上記のプロセスに沿って、東京海上グループは、2017年に経済人コー円卓会議日本委員会(CRT日本委員会)、2022年に外部の有識者、専門家の協力を得て人権リスク評価を実施しており、今後、事業活動の大幅な見直し等を踏まえて定期的に更新していく予定です。
人権リスク評価は、国内外グループ会社を対象としており、リスク発生防止策を講じるべき、主要なライツホルダーに対する人権リスクを特定しました。詳しくは、2022年に実施した人権リスクマップの結果をご覧ください。

人権DDの管理体制

東京海上グループでは、人権分科会が人権DDの実施状況の管理を行っています。

人権リスクの特定・評価の実施 人権リスクマップ

人権リスク特定の目的

東京海上ホールディングスでは、経営理念の実践にあたって、社会的責任の観点で求められる行動原則として「東京海上グループサステナビリティ憲章」を制定し、お客様、株主・投資家、代理店、取引先、社員、地域・社会および未来世代等の全ての人々の人権を尊重していくこととしています。また、「東京海上グループ 人権基本方針」を制定し、雇用者として、本業を通じて、バリューチェーンにおける人権尊重に取り組んでいます。
東京海上ホールディングスは、世界人権宣言やOECD多国籍企業行動指針、ILO国際労働基準、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、ISO26000、SA8000を支持・尊重し、国連グローバル・コンパクトに署名しています。私たちは、人権にかかる国際的な行動原則・ガイドラインを十分に理解し、社会的責任にかかるイニシアティブへの参加・貢献や人権尊重/人権DDの取り組みを通じ、持続可能な社会の実現に向けて役割を果たしていくため、特に、私たちの事業に関係するステークホルダー・ライツホルダーの人権課題(人権への負の影響等)を包括的に評価・特定しました。

東京海上グループでは、包括的に実施した人権リスク評価の結果を踏まえ、実務に携わる社員をメンバーとする人権ワークショップを開催し、外部有識者のアドバイスも得て、実務的な観点から優先的に取り組むべき人権リスクを洗い出しました。

人権ワークショップによるリスク評価および影響評価の実施

東京海上ホールディングスおよび東京海上日動は、2022年11月に企画・管理部門のメンバーによる、人権ワークショップを開催しました。ワークショップは、「『ビジネスと人権』のグローバル動向」、「ワークショップ①既存の取り組みと課題の共有と論議」、「ワークショップ②バリューチェーンの展開」の3パートで構成され、社外専門家の意見も踏まえて、当社の事業領域(自社オペレーション、バリューチェーン、保険引受・投融資)におけるリスクの洗い出しを実施しました。その結果洗い出された、優先的に対応すべき人権リスクは次のとおりです。

  • 外国人技能実習生の人権尊重
  • バリューチェーンのビジネスパートナーとともに行う人権尊重
  • あらゆる被保険者の人権尊重
  • 保険引受・投融資の企業価値の毀損防止
  • 社員の人権侵害防止
  • 広告・制作物において偏見や差別を助長しない

また、人権ワークショップによるリスク評価によりリスクが高いと特定された分野の一部で、ライツホルダーへのヒアリングによる影響度評価も実施いたしました。

事業領域毎の人権DD取組状況

人権ワークショップの結果も踏まえた、事業領域毎の人権DDの取組状況(2022年度末迄)は以下の通りです。

保険引受・投融資における人権尊重 保険引受・投融資を通じた先住民・地域住民の権利の尊重

保険引受・投融資は洗い出された人権リスクへの対応が必要であり、当社は、「環境・社会リスクへの対応方針」の枠組みの中で、国際的な行動原則やガイドラインを参考にしながら、禁止・留意すべきセクターを定期的に見直しているほか、有識者、NGO等との対話を踏まえて、随時見直しを実施しています。2022年度には、2022年9月に「環境・社会リスクへの対応方針」を改定し、先住民の権利および地域住民の権利に負の影響を与える可能性の高いオイルサンドセクターおよび北極圏における石油・ガスセクターに対する保険引受・投融資の実行を厳格化しました。

バリューチェーンにおける人権尊重 ライツホルダーへのヒアリングによる影響度評価の実施

損害保険事業において、自動車保険は主要な保険商品であり、自動車を取り扱う自動車の販売店や整備業は当社グループのバリューチェーンにおける大切なステークホルダーです。人権分野の専門家であるCRT日本委員会の協力を得て、自動車整備に従事される技能実習生等の方々との対話を行い、よりよい人権尊重に向けた意見交換を行いました。

自社オペレーションにおける人権尊重 自己点検を通じた社員の人権侵害の防止

当社は、国内外のグループ会社の「雇用者としての人権尊重」の現状について理解を深め、当社グループ社員の人権・労働の課題を特定し、課題発生の防止・軽減・改善を行うため、国際的な人権・労働の尊重基準を参考にした「東京海上グループ 人権課題に関するチェックリスト」を用いたグループ各社における自己点検を実施しています。この点検を通じて、グループ全体の「雇用者としての人権尊重」の取り組み強化につなげていきます。

サステナブル投融資での人権尊重

投融資において、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮することは、長期的なリスク・リターン向上の観点から重要性を増しています。東京海上日動は、2012年6月、保険業界が果たすべき社会的な役割と責任を重視し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEPFI)が提唱した「持続可能な保険原則(PSI)」に起草メンバーとして署名しました。また、東京海上アセットマネジメントは2011年4月、責任投資原則(PRI)の考え方に賛同し、運用会社としての立場として署名、東京海上日動は保険会社として保険引受や投資分析等において、ESGを考慮した取り組みを進めてきたことをふまえ、2012年8月、責任投資原則に署名しました。東京海上グループではPRIおよびPSIに関連する活動を通じて、投融資における人権尊重の取り組みを強化しています。

企業のサプライチェーン構築における人権リスク低減取り組みを支援

世界にまん延する強制労働・児童労働等の人権問題を解決するには、政府機関の取り組みだけでなく、グローバル企業がそのサプライチェーン全体で責任をもって対処すべきとの要求が高まっています。この問題への対処が不十分であったことによって、グローバル企業のブランド価値が大きく低下し、製品不買運動等に発展するケースも散見されます。
そこで、東京海上日動は、2017年度よりCRT日本委員会と業務提携し、世界に拡がるグローバル企業のサプライチェーン内で発生するおそれのある強制労働や児童労働などの人権リスクを低減する取り組みを支援しています。
東京海上日動は、「責任あるサプライチェーン」の推進に取り組む企業にCRT日本委員会を紹介し、当該企業はCRT日本委員会のアドバイスを受けてそのバリューチェーン全体における人権リスクの低減を図る体制を整備します。
そして、東京海上日動は、CRT日本委員会のアドバイスを受けた企業が、そのサプライチェーンの構築において人権リスクについて十分な対策を講じていたにもかかわらず、海外における2次・3次製造委託先などで隠れた人権リスクが発覚した際に、緊急対策を講じることによってかかる追加コストなどについて、オーダーメイドで保険を設計・提供します。
東京海上グループは、これからもグローバル企業のサプライチェーン構築を支援していきます。

国内外グループ会社の人権尊重の取り組みに関する実態調査

東京海上グループでは、2022年度に、国内外のグループ会社における人権尊重の取り組みの現状を確認し、今後のグループ全体としての人権関連施策の参考とする目的で、各社の所在国における関連法令や、主な外部委託先および調達先、既存の人権尊重の取り組み等の基礎情報につき書面で調査を実施しました。
この結果、各グループ会社が、外部委託および調達に際して、特に人権に問題がある業界との取引を主に行っている状況ではないことを確認しました。一方で、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が規定する国際的な人権ルールに則った取り組みを行っている会社は少数だったため、グループ全体として、施策を推進していく必要性があることを改めて確認しました。

人権侵害に関する相談窓口

東京海上グループのステークホルダーの皆様からのご不満やご要望等に対し誠実に対応できるよう、「株式会社通報サポートセンター」が運営する「グローバルステークホルダーズホットライン」で窓口を設置いたしました。本ホットラインは、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、個人や地域のために実効性のある救済メカニズムを確立すべく、設置しています。

匿名での投稿も可能ですが、東京海上グループは本窓口から受け取る情報提供や申し立てに関して通報者のプライバシーを保護し、報復行為を禁止し、不利益な取扱いは認めない事を、今一度約束いたします。本ホットラインに関する下記「受け付ける問題の範囲」及び東京海上ホールディングスのプライバシーポリシーに同意いただける場合、下記リンク先のグローバルステークホルダーズホットラインの専用サイトで東京海上グループの企業コードを入力の上、情報提供いただければ幸いです。下記グローバルステークホルダーズホットラインサイトで東京海上ホールディングスの企業コードを入力の上、情報提供を行った場合、「受け付ける問題の範囲」及び東京海上ホールディングスのプライバシーポリシーに合意したものとみなします。

情報提供するために、別途下記リンク先にある株式会社通報サポートセンターの利用規約及び個人情報保護方針への合意が必要となりますので、ご留意下さい。

グローバルステークホルダーズホットライン
企業コード
TokioMarine
受け付ける問題の範囲
グローバルステークホルダーズホットラインは下記いずれかの人権への負の影響を対象としております。
  • (a)東京海上グループが生じさせた、又は助長した人権への負の影響 又は
  • (b)東京海上グループの事業、製品、またはサービスと直接関連がある人権への負の影響

その他のご相談に関する各グループ会社の窓口はこちらからご覧ください。
グループ会社一覧 | グループについて | 東京海上ホールディングス - To Be a Good Company - (tokiomarinehd.com)

なお、グループの社員に対しては相談窓口等の観点で社員の声を把握し、社員がより働きやすい職場環境を実現するよう努めています。

2015年英国現代奴隷法、2018年豪州現代奴隷法への対応

東京海上グループでは、東京海上日動、東京海上キルン等が、2015年英国現代奴隷法に基づき、現代奴隷に関する声明文を公表しています。また、東京海上日動等が、2018年豪州現代奴隷法に基づき、現代奴隷に関する声明文を豪州政府当局に報告しています。

東京海上日動の対応

東京海上日動は、2015年英国現代奴隷法(UK Modern Slavery Act 2015)に基づき、2016年以降毎年声明文を公表しています。2018年豪州現代奴隷法(Modern Slavery Act 2018)に対しても、2020年から毎年声明文を豪州政府当局に報告(登録)しています。今後も確実に報告を実施するとともに、社員やビジネスパートナーとともに、奴隷労働や人身取引が発生することのないように取り組んでまいります。

現代奴隷(Modern Slavery)とは

奴隷状態や隷属状態、あらゆる形態の強制労働、人身取引等のことをいいます。国際労働機関(ILO)は2014年の調査で、強制労働による犠牲者は世界で約2100万人(2012年時点)、違法利益は毎年1500億ドル(推定)に達していると報告しており、奴隷労働および人身取引は現代においても深刻な社会問題となっています。

2015年英国現代奴隷法

英国政府は強制労働等現代的な奴隷労働や人身取引を防止するために、2015年3月に英国現代奴隷法(UK Modern Slavery Act 2015)を制定し、同年10月に施行しました。同法54条は、年間売上高3600万ポンド以上の、英国で事業を行う企業に対し、会計年度毎に自社事業およびバリューチェーン(サプライチェーン)において奴隷労働および人身取引が生じないようにするためにとった措置について公表することを求めています。

2018年豪州現代奴隷法

英国に続き、オーストラリア政府も2018年1月に現代奴隷法(Modern Slavery Act 2018)を施行しました。年間連結収益が1億豪ドルを超えるオーストラリアで事業を行う企業に対し、会計年度ごとに1回、当局にオペレーションやサプライチェーンにおける現代奴隷に関するリスク評価方法や軽減措置等について報告(登録)することを求めています。

ステークホルダーエンゲージメント

東京海上グループでは、質の高い人権を尊重する経営を実践していくうえで、ステークホルダーの皆様との対話を通じて、お互いの信頼を築き、人権課題の解決につなげていくことが重要であると考えています。
そこで、経営トップが率先垂範して社外有識者からの声をお伺いし、また社員がグループ各社に寄せられるお客様の声、株主・投資家や社員、ビジネスパートナー、市民社会組織とのコミュニケーション、社外有識者との意見交換等を通じて人権課題の把握に努め、それらの声を人権デューディリジェンスの取り組み等に反映し、統合レポートやサステナビリティレポート、個別の面談を通じて、東京海上グループの考えや価値観、各種取り組みへの理解浸透に取り組んでいます。
そして、ステークホルダーの皆様との対話を基礎とした、グループ人権尊重の取り組みの継続的改善プロセスを回すことで、人権を尊重する経営品質の向上を図っています。

アドバイザリーカウンシルの実施

東京海上ホールディングスは、2022年8月に、「グローバル企業に期待される人権対応について」をテーマに、CRT日本委員会・石田事務局長、ANAホールディングス・宮田上席執行役員、日本郵船・筒井執行役員を外部有識者としてお招きし、小宮グループCEO、岡田CFO、北澤CHRO、和田CSUO、鍋嶋CDIO等をメンバーとするアドバイザリーカウンシルを開催しました。
アドバイザリーカウンシルでは、人権課題を取り巻く外部環境の変化、先進企業の取組事例、人権課題の発見方法、優れた苦情処理メカニズム、人権デューディリジェンスの実務面で工夫等に関するアドバイスを頂き、当社は、外部有識者からいただいたアドバイスを、東京海上グループの人権デューディリジェンスの行動計画の策定・実施に活かしました。

ステークホルダーエンゲージメントプログラムへの参加

東京海上ホールディングスは、CRT日本委員会が事務局を務める「ニッポン CSR コンソーシアム」が主催する「ステークホルダーエンゲージメントプログラム(SHE)」に参加しています。SHEでは、さまざまな業種の企業やNPO・NGOの皆様等から人権課題に関する最新知見が共有され、人権問題が発生する文脈、事業活動と人権との関連性、重要な人権課題、および人権に配慮した事業活動の重要性に関する議論が行われています。当社は、SHEへの参加を通じて、人権課題への理解を深め、グループの人権尊重の取り組みの充実に活用しています。

人権関連NGO・NPOとの対話

東京海上グループ各社では、人権関連NGO・NPOの皆様との対話を通じてさまざまな人権課題や当該人権課題と各社の事業活動との関係、人権に関する負の影響等への理解を深め、各社の人権尊重の取り組みに活用しています。