ProAg – 長い歴史と先進的技術を持つ保険会社

2023年12月8日

米国で最も長い歴史を持つ農業保険会社であるProAgは、1920年代に創業者が馬に乗って地元の農家を回り、保険を販売したことから始まりました。そして、現在、ProAgはこの分野で最も高い技術力を誇る保険会社として知られています。また、女性であるKendall Jonesがトップを務めている唯一の米国の農業保険会社です。

Kendall Jonesは、2017年からProAgの社長兼最高経営責任者(CEO)を務めています。CEOに就任する以前は、同社の取締役副社長兼最高執行責任者(COO)を8年間務めていました。

ProAgがこれまでどのように米国の農家と農業保険会社が直面する最大の課題に取り組んできたのかについて、Kendallに聞きました。

Kendall Jones, President and Chief Executive Officer of Producers Agriculture Insurance Company (ProAg)

不安定な天候による影響

米国の農家にとって、最大のリスクは干ばつです。米国政府は1980年代から1990年代にかけて、農家への補助金を支給する「連邦農業保険プログラム(Federal Crop Insurance Program)」を促進する法案を可決しましたが、その背景には干ばつが大きく影響していました。

ProAgはこのプログラムに参加しており、連邦政府の代わりに保険金を支払うとともに、自社としてもリスクを引き受けて保険金をお支払いしています。Kendallによると、このプログラムは複雑で、約4億エーカーの農地面積と130の異なる品目を対象としたものであり、農家の所在地や作物の組み合わせに応じて、さまざまなオプションが用意されているとのことです。

「私たちは連邦政府とリスクを分担している一方で、連邦政府が決めた保険料率や規定に従う必要があります。そのため、実質的に他社と差別化できるのはサービスの部分だけになります。つまり、私たちのビジネスの成功は、誰にどのような仕事をしてもらうかにかかっていると言えます。」

「農業保険は非常に複雑なプログラムであり、農家に適切な補償を提供するには、専門知識の習得が欠かせません。当社の社員は900ページにも及ぶマニュアルを隅から隅まで熟知しています。」

さらに干ばつに加え、最近立て続けに発生した山火事などによる農作物への損害は、農家が直面している天候関連のリスクが非常に大きいことを示しているとKendallは指摘します。

2020年にはカリフォルニアで発生した山火事により、近隣のブドウ畑で煙による甚大な損害が発生しました。これは業界がまったく予想していなかった事態です。

「米国農業保険のプログラムは、煙による大量のブドウの被害を想定していませんでした。しかし、この煙による損害は保険約款上補償されるリスクであったため、私たちは農家を支援し、迅速に保険金をお支払いしました。」

このような事態を予測するのは非常に困難であり、その対応も容易ではありません。

「ここ数年の間で、私は自身のキャリアの中でも経験したことがないような大きな事故を目の当たりにしてきました。例えば、2020年の収穫シーズン前にデレイチョと呼ばれる嵐が発生し、広範囲にわたる直線的な嵐が700マイルも移動したことが挙げられます。」
「トウモロコシは強風に非常に弱く、農作物は壊滅的なダメージを受けました。被害はネブラスカ州東部、アイオワ州、イリノイ州、ウィスコンシン州、インディアナ州と広範囲にわたり、多くの農家が壊滅的な被害を受け、保険業界にとっても多額の保険金をお支払いする事案となりました。」

Kendallは、世界が経験している異常気象の根本的な原因や解決策に対する研究がなされているが、農家が「今ここで」必要な支援を確実に受けられるようにすること、そして将来に向けて彼らのビジネスをより強靭なものにするための支援もとても大切な私たちの役割だと述べています。

補償範囲とリスクの整合性

米国の農業保険会社は、これまで農家をその所在地や作物の種類に基づいてリスクを評価してきました。これらは重要な要素ですが、個々のリスクの詳細なプロフィールを作成するものではありません。しかし、ProAgは農家の経営状況をより詳細に理解するためのモデルを持っているとKendallは言います。

「種子技術は大きく進化しており、干ばつや風に強い品種も開発されています。雹(ひょう)による被害から早く回復する品種も登場しました。さらに、事故が発生した後の被害を最小限に抑えて作物の回復を促進するための肥料や対策方法もあります。」

「そこで、私たちはこうしたアプローチを積極的に採用する農家を特定できる方法を開発しました。このような農家は、他の農家よりも損失が少なく、作物の回復も早いため、そのようなことを勘案して一定の割引率を提示しています。ProAgはこれらの取り組みを通じて、市場全体の農作物の栽培品質を高めていきたいと考えています。それは私たちにとっても、農家にとっても有益なことだと考えています。」

また、KendallによるとProAgはデジタルの活用にも多くの経営資源を投資しており、テクノロジーを駆使して保険契約のプロセスを効率化していると言います。

連邦政府のプログラムには、幅広い補償範囲のオプションが用意されています。そのため、保険契約の申し込み手続きには時間がかかり、契約ミスも許されないと、Kendallは指摘します。

「私たちは保険契約の申し込み段階でリモート・センシング技術を利用しており、申し込みを完了するために必要なデータ入力のサポートや正確な事前の告知事項に関するサポートを行っています。農家が必要項目のすべてを正しく記入していない場合は補償が無効になることもあるため、この技術を活用してデータ入力時のミスや記入漏れを防いでいます。」

「私たちは確実に補償をお届けし、迅速かつ適切に保険金が支払われることについて、農家に安心していただきたいと考えています。
ProAgはリモート・センシング技術を利用することで、農家にリスクとお勧めする補償案の提示をデジタル技術でできるようになりました。これにより、農家は補償内容を迅速かつ容易に確認できるようになったため、申請や更新手続の際の致命的なミスや記入漏れを削減することができます。
また、近年の気候変動や災害によって受けた影響やリスク状況の推移などを詳しく説明し、次年度にお勧めする補償内容の変更を提案することで、農家とより深い信頼関係を築くこともできます。
これらを正しく理解することは、一つの農家だけでなく、その農家が所在する農業コミュニティ全体にとっても重要です。」

農場は地域社会における経済の中心だとKendallは言います。
「農場は雇用を生み出すだけでなく、地域の穀物エレベーター、整備士、農場の従業員、種子や肥料などの供給者など、他の関連企業との取引を通じて地域経済に大きく貢献しています。」

「農業保険は農家を支援し、農家の経営を支えることによって、その地域社会を支えます。」

より大きなグループの一員として活動

独立系企業として長い歴史を持つProAgですが、2014年に東京海上HCCの傘下に入ってからもそのアイデンティティや専門的なノウハウが希薄になることはありませんでした。また、同社の日常業務は自社判断に任せる連邦制のアプローチには初日から感銘を受けたとKendallは述べています。

「東京海上HCCでは、農業保険を熟知している専門家に一定の業務を任せ、一方でしっかりとした統制をかけているという素晴らしいガバナンス構造を採用しています。私は他の企業でも働いたことがありますが、そこでは東京海上HCCのような自由度はありませんでした。」

Kendallはさらに、東京海上グループの一員になったことには他にも利点があると言及しています。「東京海上グループ全体の規模を利用することで、再保険手配を非常に効率的に手配することができます。これは競争が激しい農業保険市場において、私たちに大きなアドバンテージをもたらします。」

Kendallは農作物保険の分野で約30年の経歴を有しており、今後もそのキャリアをさらに深めていく予定です。

「農業は社会の基盤としての役割を果たしています。農業が安定していなければ、私たちは食べ物を得ることができません。私は言わば、農業と保険の交差点に座っており、これは最高の席だと考えています。」

「ProAgの保険は、農家やさまざまな農業セクターが困難に直面した際にサポートを提供し、さらに彼らが将来のために新たな技術を開発するお手伝いをしています。」

「これは農業の発展にとって必要不可欠なことであると同時に、非常にエキサイティングなことだと考えています。そして、私の毎日を前進させる原動力になっています。」