IFRS・ICS導入に関する説明会

質疑応答要旨

以下は、2025年9月30日に開催された機関投資家・証券アナリスト向け電話会議の質疑応答の要旨です。

Q1政策株式の売却益が利益・配当原資に含まれなくなる中において、2026年度の配当は、配当性向の見直し等を通じて現行基準で期待される水準が担保されるのか。
A1

2026年度の配当は、2024年度から2026年度のIFRSベースの修正純利益の3年平均を用いて決定するが、IFRSベースの修正純利益が2024年度実績:約8,050億円、2025年度予想:8,400億円程度であることを踏まえれば、2026年度の配当原資は2025年度よりも拡大すると考えている。また、IFRS移行後も、世界トップクラスのEPS Growthを実現していき、これと整合的なDPS Growthも引き続き実現可能と考えている。2026年度の具体的な配当金額については、2025年度実績及び2026年度利益計画に基づき策定し、配当性向水準も含め総合的に検討した上で、来年5月に公表する予定。

Q2政策株式の売却益をどのように還元していくのか。また、P7(説明会資料、以下同様)に記載の、「事業計画に織り込まれている既存事業でのリスクテイク分を反映したESR 260%」は今後も開示されるのか。
A2

2026年度以降の配当については、政策株式の売却益を含めない、本業の利益をベースとした修正純利益に基づいて決定する。一方、政策株式の売却は、リスク量の削減を通じて余剰資本の拡大につながる。余剰資本については、従来と同様、先ずは、当社の更なる利益成長やROE向上に資するM&Aやリスクテイクに充て、そうした機会に恵まれなければ、自己株式取得により還元していく方針に変わりはないことから、結果として、政策株式の売却益が自己株式取得という形で株主還元に結び付くこともありうると考えている。なお、P7に記載の「既存事業でのリスクテイク分を反映したESR」については、今後も開示していく予定。

Q3現行定義ではTMNFにおける火災保険の収支改善がROE引上げのドライバーの一つになっている一方、IFRS移行後は、移行処理に伴う含み損のB/S計上により、火災保険の収支改善効果が表れにくくなる。今後はどのようにROEを引き上げていくのか。 
A3

ご指摘の通りIFRS移行に伴う含み損のB/S計上の影響を受けるものの、例えば、足元で実施しているTMNFにおける自動車保険の料率改定は、IFRS移行後も利益成長に寄与することから、着実にROEの改善に繋がる。引き続き世界トップクラスのEPS Growthの実現と規律ある資本政策を通じて、グローバルピア水準へROEを引き上げたいと考えている。なお、2026年度のIFRSベースの修正ROE計画は、2026年5月に開示する予定。 

Q4IFRS移行に伴いC/Rの水準が引き下がるが、今後のプライシングに影響はあるのか。また、目指すC/Rの水準も変わるのか。 
A4

プライシングについては、従前より「今後お引き受けする契約について適正な料率水準」を検証し策定しているため、定義変更に伴うC/Rの水準変化はプライシングには影響しない。現中計でターゲットとしているC/Rについては、引き続き現行定義で達成度合いを評価するが、IFRSベースの新たなターゲットについては、2027年度から始まる次期中計でお示ししたいと考えている。 

Q5新定義ベースのESRの水準について、現時点での評価をお伺いしたい。 
A5

リスク量および実質純資産の定義が変わったことでESRの水準が引き上がったが、「AA格の資本を維持する」という当社のスタンスには変わりはない。その中で、足元では、政策株式の売却加速に伴い余剰資本が生み出される過程にあることから、ESRはグローバルピアよりも高い水準となっているが、当社には不要な資本を理由なく貯め込むという考えはなく、更なる利益成長やROE向上に資する資本の活用対象を見極めて、実行に移していく間の通過点であると考えている。 

Q6ESRのターゲットレンジの上限を撤廃する理由は。また、資本政策の規律を外部から評価する観点から、例えば、足元で優良な投資機会をどの程度保有しているか等を示す予定はあるか。 
A6

当社では、政策株式の売却加速に伴い余剰資本が生み出される過程にある。そのような中で、世界トップクラスのEPS Growthを実現しつつ、グローバルピア水準のROEを実現していくためには、ESRがターゲットレンジの上限を超えているということを理由として資本政策を決定するのではなく、真にROE向上に資する資本の使い方となっているかを見極めながら、資本政策を遂行していくことが重要と考え、ESRのターゲットに上限を設定しないことが妥当と判断した。足元の投資機会をお示しするという観点では、P7に記載の通り、既存事業におけるOrganic Growthのためのリスクテイクとして、0.3兆円を事業計画に織り込んでいることをお示ししている。Inorganic Growthの機会については、足元でもボルトオンM&Aを含め複数の案件を検討しているが、事前にお示しすることは難しく、トラックレコードによってご評価いただきたい。 

Q7IFRS・ICS導入に伴いESRの感応度が大きくなっているが、会社運営に影響がある分野はあるか。 
A7

当社のERMやALMにおいては、これまでも経済価値ベースの考え方を用いているため、IFRS・ICS導入後も、ERMやALMを中心とした経営戦略・事業運営に影響はない。また、ESRの感応度については、リスク量計算の信頼水準を99.95%VaRから99.5%VaRに変更することから、感応度の変化幅は従来よりも大きくなるが、AA格の資本を維持しながらRORを最大化するという考え方に変更はない。 

Q8本日の公表に向けて、事前に資本市場にヒアリングを行ったとのことだが、どういった意見があったのか教えてほしい。 
A8

ヒアリングを通じて最も関心が高かったものは、会計基準の変更に伴い利益水準が変わる中で、従来から掲げている「世界トップクラスのEPS Growthと整合的なDPS Growth」が実現できるのかという点。その中で、配当原資に用いる修正純利益の平均期間については、「修正純利益からキャピタル損益を控除するとすれば、従来対比で単年度利益のボラティリティが下がることとなるため、短縮してもいいのでは」というご意見を反映したものとなっている。定義変更という観点では、KPIやESRの定義をグローバルピアや新資本規制との比較可能性や整合性を重視したものとした点について、好意的に受け止めていただいたと理解している。

Q8(更問)ESRのターゲットレンジについて、上限を撤廃することに関する意見はあったか。 
A8(更問)

上限を撤廃することに関するご意見はいただいたが、欧州ピアもESRのターゲットに上限を設定していないことも踏まえ、ご理解いただいていると理解している。一方、ROEについては、グローバルピアとの比較可能性も向上したことから、従来以上にROE向上に向けた具体的な取組み内容に関する説明責任が強まったと認識している。 

Q9ESRの水準が世界トップクラスに高い中で、欧州ピア対比で配当性向の水準が低いのではないか。 
A9

当社の2025年度の株主還元の水準はDPS 210円及び自己株式取得2,200億円と、平均的な修正純利益に対する単年度の総還元性向は70%を超えている。その中で、足元の当社のESRが高い理由は、欧州ピアにはない政策株式の売却加速に伴う短期間での資本のリリースに起因しており、引き続き、余剰資本を将来の利益成長やROE向上に資するものに規律をもって活用していくことが重要であると考えている。 

Q10足元の株価水準を踏まえれば、資本水準調整としての株主還元の拡大は、配当と自己株式取得のどちらが望ましいのか。 
A10

当社では、資本水準調整として過去に特別配当を実施したこともあるが、特別配当により配当の水準が上下することは、場合によっては減配と捉えられる恐れもあることから好ましくない。従って、当社では資本水準の調整は、自己株式取得を基本的な手段として考えている。 

Q112025年度の資本水準調整は、現行定義と新定義のどちらに基づいて判断されるのか。 
A11

本日お示しした新定義ベースのKPIやESRは2025年度末からの適用であり、2025年度中の配当や資本政策については、現行定義に基づいて判断する。 

Q12P23について、債券や株式の為替変動はPLで計上されるという理解か。その場合、為替感応度は現行定義からどう変化するのか。 
A12

ご理解の通り、IFRSでは外貨建ての金融資産に係る為替変動がPLに計上される。為替感応度について、現行定義における1円円安による影響は、25年度計画において国内:▲27億円、海外:+31億円、グループ全体:+4億円となっている。これは、JGAAPでは、外貨建ての金融資産の為替リスクをヘッジする目的で保有しているデリバティブについて、一部ヘッジ会計が適用できないことから、ヘッジ対象である外貨建て金融資産と、ヘッジ手段であるデリバティブの為替変動がBSとPLに分かれて計上されている影響を含んだ感応度となっている。
一方、IFRSでは、ヘッジ対象である外貨建ての金融資産と、ヘッジ手段であるデリバティブの為替変動が両方ともPLで計上され、相殺される構造となる。この構造の違いにより国内における為替感応度が変化し、IFRSベースでは1円円安により、国内:▲17億円、海外:+31億円、グループ全体:+14億円となる。 

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