2023年度第2四半期決算電話会議

質疑応答要旨

以下は、2023年11月17日に開催された機関投資家・証券アナリスト向け2023年度第2四半期決算電話会議の質疑応答の要旨です。

Q1今回の自己株式取得について、保険料調整事案も抱えるなかで、どのような議論・判断があったのか。足元のESR水準を踏まえれば、200億円を上回る自己株式取得も可能ではないかと思うがどうか。 
A1

自己株式取得については、年初時点で「足元の資本水準等の状況等を踏まえ、現時点では、年間を通じて1,000億円を、期中の市場環境や株価の状況等を総合的に勘案して機動的に実施する」との方針を開示していた。その上で、今回1,200億円への拡大は、9月末のESR水準に加え、グループ再編に伴う一過性の利益や、足元のM&Aパイプライン等の状況を総合的に勘案し、機動的に金額を見直したもの。 

Q2来期以降の株主還元についても、足元のイシューは切り離して考えて良いか。 
A2

然り。なお、次年度は次期中期経営計画の初年度であり、来年5月にはその詳細をお示しする。その中で株主還元の方針についてもお伝えする予定だが、現時点では従来の方針を継続していきたいと考えている。すなわち、株主還元の基本は配当であり、世界トップクラスのEPS growthを背景に、配当原資である5年平均の修正純利益を拡大させ、持続的にDPSを引き上げていく、という方針を大きく変える予定は無い。また、資本水準の調整についても、当社の企業価値・ROE向上に資するM&Aやリスクテイクの案件があればそれを実行し、機会に恵まれなければ、自己株式取得を実行するという従来の方針から大きく変える予定は無い。 

Q3北米全体のトップラインの修正予想は+3.3%と、年初予想よりは上振れているものの引き続きピア対比で弱いのではないかと感じるが、その背景は。同じく、事業別利益も、北米全体で+1.1%と低い理由は。 
A3

前提として、当社がむやみにトップラインを追わない「ボトムフォーカス」であることに変わりはない。その上で、今回修正予想を策定するにあたっては、全体としては年初想定よりもハードマーケットが継続している中で、足元のトップラインは年初計画を上回って順調に推移している一方で、D&Oなど一部のSpecialty種目ではレートダウンとなっているため、これらの影響を一定織り込んでいる。なお、現地3Qのトップライン速報値は、修正予想を上回って推移しているため、これが継続すれば、上振れて着地することになる。一方、北米の事業別利益の修正予想が低位に留まる理由としては、DFGのキャピタル損等の影響もあるが、ハワイ山火事のロスが北米全体の合計値に含まれている影響もある。 

Q4「指定工場ネットワーク情報のオープン化」とはどのようなものか。 
A4

現行の指定工場制度は、当社選定基準をクリアした工場を当社からお客様に紹介する仕組みであるが、修理工場毎に特性は様々であることから、今後これらの情報をお客様に開示して、複数の選択肢からお選び頂くというスキームを想定している。お客様のニーズに応じた対応が可能となる仕組み作りを企図しているもの。 

Q5ビッグモーター社(BM社)による保険金不正請求問題の真因はどこにあったと分析しているか。 
A5

1件ずつ厳密にチェックする従来の損害査定プロセスにおいて、故意に損傷を作出する手口は想定していなかったため、悪質かつ組織的な請求を当社が見抜くことができなかったことによる。本件を踏まえて、査定プロセスの見直し・強化に既に着手している。また、指定工場制度の本来の目的は優れた修理工場を紹介することで品質の高いサービスをお客様に提供することだったが、なかには入庫紹介を自賠責契約とバーターするようなケースも生じていた。当社としては、指定工場制度をお客様起点で見直すとともに、入庫紹介実績が保険シェアに直結するようなスキームを有する修理工場代理店に対しては、その見直しの申し入れを既に行っている。 

Q6Normalizedベースの通期予想に、CECLとADCのリザーブ積み増しを含めている(一過性として控除していない)理由は。それぞれ来期も何か懸念があるということか。 
A6

Normalized利益から控除している項目はまさに「一過性」として考えているもの。その中で、CECLは「来期も生じる」という確かな懸念があるものではないが、来期の発射台ともなるNormalized利益に含めているのは、明確に「一過性」として捉えているわけでもなく、また当社として楽観モードではない、状況をしっかり注視していく必要がある、と考えているもの。ADCについては、8月時点からややディベロップしているが、残りLimitはUSD70mn程度となっており、それが上限とはなるが、こちらも特段「来期も生じる」という懸念があるわけではなく、一方でこちらも明確に「一過性」と考えているわけでもないため、整斉とNormalized利益に含めているもの。 

Q7今後、金利が低下に向かう局面におけるインカム収益の持続性はどうか。 
A7

インカムについて、米国金利がどこで落ち着くのかは分からないが、フォワードルッキングにポートフォリオの入れ替えも進めており、また保険事業自体は好調であることからAUMも拡大できるため、当社としては当面は着実にインカム収益を維持できると考えている。 

Q8企業向け火災保険について、収益改善の足元の進捗と、来期以降の見通しは。保険料調整行為があった中で、収益改善の取り組みは進んでいるのか。 
A8

社会インフラとしての保険を安定的に提供するためには収益性の維持・拡大が必要であり、その根幹が適時適切な保険料設定であると考えている。足元、ハワイ山火事等の一過性影響を除けば、収益改善の取組みはほぼオンペースで進捗しているものの、企業火災・家計火災ともに収益性の改善が未だ必要な状況であり、今後の料率改定・リザルト対策などについても予定通り続けていく。 

Q9保険料調整行為による業績への影響は特段無いと考えて良いか。 
A9

複数の外部弁護士を起用した特別調査委員会による調査が継続中であるが、現時点で、本件を理由とした業績見直しは行っていない。 

Q10今後、「インフレ等により自動車整備工場の経営が悪化して適正な修理費が取れない」、「保険購買時に企業が保険会社の見積もりの妥当性に懸念を抱く」といったイシューはこれから生じてくるのか。中長期で見ても業績への影響はないと言えるか。 
A10

前者の修理工場の経営悪化に伴う業績影響について、足元ではインフレに伴い部品単価および工賃が引き上がっている状況だが、工賃に関しては、物価水準の引上げに伴った工賃決定スキームで運営しており、修理工場とも対話をしながら適切に引き上げてきている。自動車保険収支への影響だが、例えば日銀CPI見通しに沿った+2.8%程度の工賃引上げであれば、支払保険金で30億円程度のインパクトとなる。後者の火災保険に関する懸念は、「リザルト対策を着実に実行できるか」が重要であるが、足元、収支改善が必要な状況に変わりは無いため、契約者に対する丁寧な説明を通じてご理解を得ながら安定的な補償提供を続けると共に、収益改善取組みに影響が出ないように対応していきたい。 

Q11保険料調整行為の問題が正常化する中で、損保会社間の差別化が効きやすくなるような可能性はあるか。 
A11

先ほども申し上げた通り、複数の外部弁護士を起用した特別調査委員会による調査が継続中であるが、個別案件の調査だけではなく、真因をしっかりと特定することが重要だと考えている。特定した真因に対して、どういった再発防止策を講じるかによっても各社業績等への影響も変わり得るため、現時点ではご質問いただいた「可能性」についてご回答することは難しい。 

Q12北米キャピタル損について、CREローンのロスがどの程度あり、どのような対応をしているのか、現状を補足いただきたい。 
A12

今般、CECL積み増しもあり、北米で年初計画対比▲590億円のキャピタル損を見込んでいる。その内訳は、減損▲90億円、CECL▲310億円、他に売却損益等。その中でも主なアセットクラスがCREローンとなるが、年初計画対比で、減損▲110億円、CECL▲250億円を見込んでいる。一方で、こうしたキャピタル損については、インカムゲインの上振れで相当程度の打ち返しが出来ている。CREローンのキャピタル損の増加については、金利上昇が予想外に長く続いていること、在宅勤務の定着によるオフィスセクターの市況悪化などが背景となるが、その中で当社は目利き力を活かし、足元でも、キャピタルロスを考慮した上でも高いリターンを確保出来ている。引き続きモニタリング・リスク管理を徹底し、案件を慎重に見極めながら投資を継続する。 

Q13北米保険引受利益のモメンタムについて、レート環境が良好な背景について改めて確認させていただきたい。また、来期以降の見通しについてはどう考えているか。 
A13

ハリケーンIanを踏まえた再保険マーケットのハード化やインフレに伴うロスコスト上昇等により、足元でレートが再上昇する種目が出てきている状況にある。来期以降については断定的なことは言えないが、米国コマーシャルマーケットにおけるハード化状況は今しばらく継続すると見ている。種目にカラーを申し上げると、Propertyは引き続き好調である一方で、Specialtyはライン毎に濃淡がある。より具体的には、D&Oやサイバーはやや弱いが、Liabilityは好調。当社としては引き続きロスコストの動向も見極め、規律あるアンダーライティングを堅持しながらレートアップを続けていきたい。 

Q14上期実績、通期予想に対する経営の評価を伺いたい。北米キャピタルや自然災害も多い中で、計画修正も小幅に収まっていることを踏まえると、順調と評価して良いか。 
A14

グローバルに事業を拡大していく中では、大なり小なり様々なことが起こり、どこで何が起こっても他人事ではない。その中で、特にここ数年、グローバルなリスク分散を強く志向すると共に、個社が持つ強みをグループ全体で活用するグローバルなグループ一体経営を力強く進めてきた。どこかでイシューが発生しても、各地域・拠点が補完をし合う、互いに補っていこうという意識も積み重なることで、業績は一定の成果を出せている、トラックレコードが積み重なってきているのではないかと考えている。今後も、成長とガバナンスの両方を高めると共に、当社グループのパーパスと、HDやGCが行う戦略の在り方、その結果としての業績や、当社を支えているステークホルダーへの貢献、これらが一直線に繋がっていく経営をめざしているし、少しずつ浸透してきていると考えている。総じて、当社は強くなっており、これまでと違った立ち位置にいると考えている。 

本資料は、現在当社が入手している情報に基づいて、当社が本資料の作成時点において行った予測等を基に記載されています。これらの記述は将来の業績を保証するものではなく、一定のリスクや不確実性を内包しております。従って、将来の実績が本資料に記載された見通しや予測と大きく異なることになる可能性があることをご承知おきください。