2023年度第1四半期決算電話会議

質疑応答要旨

以下は、2023年8月7日に開催された機関投資家・証券アナリスト向け2023年度第1四半期決算電話会議の質疑応答の要旨です。

Q1一連のニュースリリース(保険料調整行為とビッグモーター社)について。東京海上HDの取締役会、経営会議等では、当該案件をどのように受け止め、どう対応しているのかを教えてほしい。また、自己株式取得の通期計画(1,000億円)の増額を検討する際には、これらの事案は影響するのか。 
A1

当社では本件を大変重く受け止めている。保険料調整行為については、最初に報道された事案を1月に当社として認識し、その時点で事実関係の早急な解明、お客様への対応、再発防止策の策定等を指示している。当社の取締役会には、社外弁護士を起用して実施した当該事案の調査結果も踏まえて4月に報告し、その後も、毎月情報共有および対応に関する論議を行ってきた。ビッグモーター社については、事案発覚後、TMNFの自主調査およびビッグモーター社の調査状況も踏まえながら、当社経営にも適時に情報共有がなされており、ビッグモーター社に対して一貫して毅然とした対応を行うというスタンスをフォロー・監督してきている。なお、これら事案は、現時点で直ちに業績に影響があると見ておらず、株主還元への影響も現時点では想定していない。今後、9月末のESRの状況等を踏まえたうえで、見直しの有無を検討したいと考えている。 

Q2DFG資産運用について。1Qに▲110億円(税前)のキャピタルロスが出ているが、この内訳を教えてほしい。米国短期金利が高い水準で推移しているが、インカム利益、キャピタル損失、ヘッジコストに関して、年初計画対比の影響について教えてほしい。 
A2

▲110億円のキャピタルロスの内訳は、減損が約USD▲50mn 、売却損益が約▲20mn、CECLの積増が約▲10mm。キャピタルロスの下振れはインカムの上振れでほぼオフセットしている。国内3社のヘッジコスト(税前)は、1Qで▲220億円、年間で▲900億円程度を見込んでおり、進捗は概ね計画通り。 

Q3ADCについて。▲110億円(税後)のリザーブの積増は、修正純利益通期予想の6,700億円に織り込まれているのか。 
A3

当社が本件を受領したのは6月であり、年初通期予想時点では織り込んでいない。 

Q4保険料調整行為に関連して、企業火災保険の足元の収益性について教えてほしい。また、一連の報道により、料率引き上げが困難になる状況などは生じていないか。 
A4

火災保険の収益性については、企業分野・個人分野の双方で、引き続きの改善取組みが必要であると考えている。現時点で、企業のお客様から報道に関連して特別な要請等を受けている状況にはなく、引き続きご理解を得られるよう丁寧なご説明を実行していく。 

Q5自動車保険のC/Rは、1Qだけで+3.5pt(自然災害の影響を除く)上昇しているが、23年度通期の見通しについて何か変化はあるか。
A5

1Qでは事故頻度が若干想定を上回って推移しているが、今後リベンジドライブ等が段階的に収束していくことで、年初想定通り2~3pt程度の減少になると見込んでいる。また、保険金単価はほぼ想定通りに進捗している。 

Q6今後の自動車保険の料率改定方針に変化はあるか。 
A6

足元のロスコストの状況および今後の見通しを踏まえると料率の引上げは必要な状況と考えている。今回のビッグモーター社の不正請求については、個々のお客様に対する等級訂正のご案内等、当社として当然丁寧に対応をする前提であるが、当社自動車保険契約におけるビッグモーターへの修理入庫件数を考慮すると、全容は解明されていないものの、自動車保険全体の収支状況に与える影響は、現時点では些少と考えている。今後、今回の不正請求について実態を精査した上で、その影響を勘案して24年1月の具体的な料率改定方針を決めていく。 

Q7ビッグモーター社の案件で、等級を訂正する場合に、どの程度のコスト増加を見込んでいるのか、規模感を教えてほしい。 
A7

件数は現時点での仮置きだが、当社契約で過去3年間にビッグモーター社に入庫した事案約3万件に対し、そのなかで等級訂正に伴う返還保険料がお客様からご返金いただく保険金を上回るといった、お客様にとって経済合理性のあるご契約が等級訂正の対象となるが、そのような件数は先行調査の結果を踏まえると軽微と見込んでいる。 

Q8自賠責はno loss and no profitとの理解であるが、自賠責の引受ボリュームがなぜインセンティブに繋がるかについて教えてほしい。 
A8

ご理解の通り、自賠責は当社の利益にはつながらない。一方、自賠責は任意保険と2階建て構造にあり、自賠責をきっかけにお客様とのタッチポイントを増やすことにも繋がる。なお、トップラインは全種目ベースで目標設定しており、自賠責もその中に含まれている。 

Q9北米のトップラインについて。PHLYはオントラックで、DFGとHCCは上振れしているとの理解でよいか。 
A9

北米のトップラインは計画を上回って推移している。自然災害の増加やソーシャルインフレ等によるプロパティのハード化が一定影響している面もある。PHLYはレートアップが順調である一方、再保険料の高騰がマイナス要因、それでも計画を上回って推移している。ライン別では、DFGは特に生保ビジネス、具体的には団体保険と就業不能保障等が、HCCはサイバーとMSL等が、それぞれ好調。 

Q10国内の新種保険が順調であるが、領域毎のカラーを教えてほしい。 
A10

重点4領域のなかでも、Q1はSMEが順調であり、増収の約半分を占めている。 

Q11政策株式売却の進捗について教えてほしい。 
A11

売却額は、前期対比では減少しているが、オンペース。昨年はロシア・ウクライナ戦争の影響を考慮し、前倒しで売却を実施したが、今年は期初の計画どおり売却を実施している。 

Q12代手ポイント制度において、代理店毎の損害率は評価項目のひとつと認識している。その制度運用の中で、今回のビッグモーター社による不正な保険金請求を見抜くことはできなかったのか。 
A12

代理店の損害率実績が代手ポイントに勘案される点はご認識の通り。ただし、ビッグモーター社の損害率は特に悪い状況ではなく、こうしたマクロ的な指標から不正を発見することは難しかった。また、当社では各修理工場による修理見積もり等を1件1件厳密にチェックしているが、本件は作業内容・範囲を誤認させるような写真を添付するなど、極めて巧妙な手段で修理費の過剰請求がなされていたものであり、通常の査定においても発見することは困難であったことはご理解いただきたい。その上で、お客様の被害回復を最優先に、本件の全容解明を行うとともに、適切な査定対応に努めていく。 

Q13共同保険の保険料および火災保険料の適正水準はどのように決まっているのか。 
A13

共同保険は、各保険会社がそれぞれの条件・料率を検討・提示し、契約者と対話のうえ決定される仕組みである。最終的には、契約者が各保険会社に引受条件や引受シェアを打診し、各保険会社がそれを受け入れることで共同保険が成立する。なお、保険料水準については、企業毎のリスク実態や、事故発生状況、防災・危機管理対策状況などを勘案のうえ決定しているものであり、今後もこの運用が変わるものではない。 

Q14海外主要拠点の保険引受利益が1Qで+70億円、1H(速報)で+200億円上振れた要因について教えてほしい。 
A14

DFGとTMSRの上振れが大きく寄与しており、1HではTMKの上振れも貢献してくる。 

Q15HCCの保険引受利益の進捗が悪いように見えるが。 
A15

増収効果の一方で、ドル安・ポンド高に伴う外貨建支払備金の増加や相対的に事業費率の高い種目における増収があったことにより、Q1計画対比ではややビハインド。1Hでは計画対比キャッチアップしている。 

Q16今回のビッグモーター社の件が、損害査定面を中心としたデジタルの活用による事務効率化に水を差す可能性はあるか。 
A16

そのようなことはない。査定の適正化では、デジタルを活用した画像解析や過去データの解析等の研究も進めており、デジタルを引き続き積極的に活用して進めていく。 

Q17火災保険料の水準について。収益が厳しい状況は各社同様であり、結局同じような水準の保険料に収斂してしまうのではないか。 
A17

火災保険料は過去の事故データに限らず、将来の予測も踏まえて決定される。従って保険料が一意に決まるものではないし、リザルト対策実施方針や引受方針によって各社の引受ポートフォリオは異なるため、ベースとなる事故状況も各社では異なっている。 

Q18保険料の調整行為について。8月4日のTMNFリリースでは「全店調査」となっているが、全件調査をするのか。 
A18

金融庁からは全営業部店に対する伏在調査の実施にかかる報告徴求命令を受けている。 

Q19ALは、このまま円安傾向が続くと、通期予想を下回るのか。 
A19

然り。当期のPL影響という観点では、一部ヘッジ損が生じるため、通期予想を下回ることになる見込み。但し、経済価値ベースではフラット。 

Q20今回の保険料調整事案を踏まえて、今後、共同保険が無くなる可能性はあるか。 
A20

共同保険は、高リスクな引受を保険会社一社で引受けるのが困難なケースにおいて、契約者・保険会社双方にとって必要な仕組みであると認識している。一社単独で元受し再保険を活用する選択肢もあるが、再保マーケットの影響を受け易くなることで、契約者にとってもキャパシティ確保の安定性が損なわれる可能性がある。これらの観点から、共同保険が無くなることは想定していない。 

Q211Qの国内自然災害に係る発生保険金は140億円となっているが、7月の西日本等各地での大雨、北関東での雹災の影響はどの程度か。 
A21

7/31-8/1に北関東で発生した雹災の速報ベースの概算見込みを含め、1Qからの累計で550億円(税前)程度を見込んでいる。なお、この概算値には直近の台風6号の影響は含まれない。  

本資料は、現在当社が入手している情報に基づいて、当社が本資料の作成時点において行った予測等を基に記載されています。これらの記述は将来の業績を保証するものではなく、一定のリスクや不確実性を内包しております。従って、将来の実績が本資料に記載された見通しや予測と大きく異なることになる可能性があることをご承知おきください。