Tokio Marine Insights「デジタル戦略説明会」

質疑応答要旨

以下は、2020年6月25日に開催された機関投資家・証券アナリスト向け Tokio Marine Insights「デジタル戦略説明会」の質疑応答の要旨です。

Q1生田目氏はテクノロジーに強い他社での勤務経験があるとのことだが、こうした他社対比で、当社のデジタル戦略の優れている点あるいは課題を教えてほしい。
A1

当社は3つの明確なコンセプトに基づき、より良い商品・サービスの提供を通じて、社会課題やお客様の課題解決に貢献することをめざしており、これ自体が当社の強み。デジタルの活用はあくまでも手段であり、何のためにこれを活用するのかという「目的」を明確にし、その目的を達成するために人の力とデジタルをベストミックスさせる。また、当社の人材の厚さやグループ各社の強いコミットメントも大きな強み。当社が取り組むべき領域、お客様の拡がりが多岐に亘る中で、人、モノ、金といったリソースの配分、優先順位付けは悩ましい問題ではあるものの、引き続きグループ各社の知見・叡智をグローバルベースで活用することで、スピード感をもって変革を成し遂げたい。

Q2マネジメントの中でもデジタルリテラシーに較差があり、また子会社によってお客様や商品、チャネルが大きく異なる中、グループ横断のデジタル戦略は成立し得るのか。
A2

グローバルに幅広い事業を展開する中で、デジタルというテーマで横串を通すことは非常に大きなチャレンジだが、これを乗り越えることができれば、大きな成果に繋がると考えている。こうした考えのもと、この4月から機構改革も実施し、グループ・グローバルベースの取り組みを強化している。国内外グループ各社の知見・叡智、そして強いコミットメントを燃料にしながら、スピード感を持って変革に挑戦していく。また、デジタルリテラシーについては、マネジメントに限らず、広く役職員において、個々人の経験や担う業務等によって濃淡があるのは事実。コロナ禍での経験や学びも活かしながら、Web会議等を通じたデジタルリテラシーの向上を図るとともに、Data Science Hill Climbを通じたデジタル人材の育成にも積極的に取り組んでいく。

Q3コロナ禍でデジタルの活用が進んでいるが、学びはあるか。また、デジタル投資によりコストの増加も見込まれるが、事業への影響はないか。
A3

当社はコロナ前からペーパレスやリモートワーク、デジタルを活用した契約募集等、ビジネスモデルや働き方の変革に挑戦してきており、実際に、こうした取組みが今回のコロナ禍でも大いに役に立っている。例えば、本年2月にリリースしたQRスマホは、スマホを活用した快適な契約手続きを実現し、リモートワークは移動時間の削減や専門部署による第一線の支援強化にも繋がっている。コロナをチャンスととらえ、またコロナの経験も十分活かしながら、ビジネスモデルや働き方の変革を更に加速させていく。また、コストは、成長性や生産性の観点からプロジェクトごとに精査し、管理している。事業費率はトップライン等の動向にもよるのでデジタルだけで全てが決まる訳ではないが、デジタルが当社のコスト構造変革のカギを握るため、今後も成長性、生産性双方の観点から人とデジタルのベストミックスを進めることで、将来的には30%を下回る事業費率を実現していきたい。

Q4人工衛星の活用前後で、事故発生から保険金支払いまでのタイムラグはどの程度短縮されるのか。
自然災害を例に説明してほしい。
A4

損害サービスプロセスは、①現地立会の上、有無責(保険金の支払可否)の判断を行う、②修理業者の見積りを精査することで、損害額を決定し、保険金をお支払いする、という2つのプロセスに大別される。②の期間は台風直後の修理業者の逼迫度に左右されるものの、①は人工衛星等を活用することで短縮が可能。具体的には、従来2週間程度要していた期間を数日単位に短縮することをめざしている。なお、人工衛星は昨年の台風19号から活用しているが、更なる活用に向けて年度内に改善を図る予定。

Q5顧客サービスを高めることで、トップラインを成長させる事例を教えてほしい。
A5

既存代理店チャネルのカギは、代理店の持つリアルな強みとデジタルを掛け合わせることにある。モバイルエージェント(お客様向けアプリ)やQRスマホ(スマホによる契約手続き)等を通じたデジタル接点の強化や、世界最高峰のCRMと言われるSalesforceのパッケージを活用した新代理店システムの構築等を通じて、成長を加速させたい。また、新たなチャネル開拓としては、プラットフォーマー・マーケットホルダーの経済圏を活用しながら、新たなデジタル販売モデルの構築を進めている。ターゲットを明確にしながら、新たな商品・サービスの開発にも注力していく。

Q6Leanな経営体制を目指す上で、グローバルピアを凌駕するような、ユニークな取組みは可能か。
A6

生産性の向上で創出されたリソースを、より付加価値の高い領域(例えば、事故・災害の被害軽減等、保険金の支払いにとどまらないサービスの提供)に再投資する取組みを進めている。また、デジタルも活用して働き方やビジネスモデルを変革するためには、マインドセットの変革も重要。従来は、本店で考えた施策を現場第一線に伝えるのが通常だったが、デジタルの取組みではアプローチを変えた。実際にお客様対応の実務にあたっている若手社員を各地から集め、損害サービスの将来像やデジタル戦略の方向性、デジタルを実務にどのようにビルトインしていくのか、といったことを共有・論議している。そして、ここで生まれたアイディアを、若手メンバーが推進役となり、各地で横展開している。

Q7DXを進める上での社内の岩盤は何か。また、それを打破するための取組みは何か。
A7

当社は日本最古の伝統的な保険会社で、M/S(マーケットシェア)は国内トップ、かつ強固な収益基盤と販売チャネルを併せ持つ。「イノベーションのジレンマ」で日本企業が例示されるように、当社にも勿論課題はある。ポイントは、こうした強みを維持しながら、如何に課題を克服していくかということ。新たな商品・サービスや販売モデルの開発・構築をミッションとして、専門性の高い人材の採用等を通じて、外部の文化も取り入れながら、スピード感を持ってイノベーションを創出していく。

Q8当社はself-disruptionの取組みを行う考えやアイディアがあるか。
A8

目標の実現サイクルが早まる、日本式のやり方が通用しなくなる、あるいはお客様、市場、競合の動き方が変化する等、デジタルはビジネスのルールを変えたと言っても過言ではない。こうした変化の激しい時代において、引き続き社会やお客様のお役に立ち続けるためには、当社自身も変わっていく必要がある。伝統的な企業だからこその難しさもあるが、自らを変えていく努力、執念を持って進めていくことが必要。グループ社員全員が同じ目的意識をもって、グローバルの知見・叡智を結集しながら、スピード感を持ってdigitalizationを推進していく。

Q9東京海上グループにしかできないデジタル戦略、他社対比の優位性を教えてほしい。
A9

他社との比較は難しいが、実際に当社と協業したいというパートナーからの声かけは非常に多いし、これ自体にもリアルな価値があると考えている。また、当社はグローバルに幅広い事業を展開しているため、そこに横串を通し、叡智を結集することで、化学反応が起きやすい体制にある。グローバルレベルでの活発な論議を通じて、多様なアイディア、情報、ネットワーク、コネクションを取り込み、それを実行する力、グローバルデジタルシナジーを生み出す力にも優位性がある。

本資料は、現在当社が入手している情報に基づいて、当社が本資料の作成時点において行った予測等を基に記載されています。これらの記述は将来の業績を保証するものではなく、一定のリスクや不確実性を内包しております。従って、将来の実績が本資料に記載された見通しや予測と大きく異なることになる可能性があることをご承知おきください。