保険の枠を超え、革新的なソリューションを届け続けるパートナーへ(前編)

2024年3月1日

東京海上グループでは、保険やその関連事業を通して蓄積してきたリスクマネジメントのノウハウやデータをベースに、独自のリスクソリューションを開発してきました。

そして2023年11月、重点領域に専門的に取り組む2つの新会社として、モビリティ領域を担う「東京海上スマートモビリティ株式会社」と、防災・減災領域を担う「東京海上レジリエンス株式会社」を設立しました。

東京海上スマートモビリティ 代表取締役社長を務め、東京海上レジリエンスの取締役副社長でもある原田 秀美、東京海上スマートモビリティのプロダクトマネージャーである亀井 璃久、東京海上レジリエンスの事業開発を担当する関 直人の3名が集まり、座談会を開催しました。前編にあたる本記事では、東京海上スマートモビリティにフォーカスし、同社の新たなソリューション事業にかける想いや展望についてインタビューしました。

東京海上スマートモビリティ 代表取締役社長 原田 秀美(中央)、同社プロダクトマネージャー 亀井 璃久(左)、東京海上レジリエンス 事業開発 関 直人(右)

東京海上スマートモビリティは、どのような経緯で設立されたのでしょうか

原田

近年、モビリティに関する課題は事故防止や安全運転に留まらず、2024年問題に象徴されるようなドライバー数の減少に伴う輸送力の低下、車両管理、ドライバーの労務・健康管理、あるいは脱炭素化や自動運転への対応等、多様化・深刻化しています。

東京海上グループでは、1879年の創業時から「お客様や社会の“いざ”をお守りする」というパーパスのもと、時代とともに変化する社会課題に向き合ってきました。現代社会において多様化・深刻化する課題に直面しているお客様をお支えするために、我々は保険領域に留まらず、ソリューション事業にも注力しています。これにより、お客様の“いざ”をお守りするだけでなく、“いつも”を支えることができる存在へと進化することが狙いです。

具体的には、新たに取り組むソリューション事業のひとつとして、モビリティ領域を選定しました。冒頭で述べた社会問題の解決が求められていることに加え、1914年に東京海上日動が日本初の自動車保険を提供して以来、私たちは100年以上にわたりモビリティ産業を支え続けてきました。事業を通じて得たノウハウやテクノロジーを最大限に発揮し、社会やお客様の課題解決に資する付加価値の高いサービスを提供していくため、東京海上スマートモビリティを設立しました。

さらにモビリティ領域の市場は、2030年以降に7,000億円を超える規模になると見込まれています。この領域に取り組むことで、弊社の「社会的価値」を高めながら「経済的価値」も高めていきます。

亀井

物流業界が直面する課題を解決するためには、従来業務のデジタル化だけでなく、テクノロジーやデータを用いた業界の変革が求められていると感じています。

東京海上グループではこれまでも、ドライブレコーダー付き自動車保険やAIを活用した交通事故削減支援サービス、国内最大級の独自事故データベースを活かした安全運転の可視化等に取り組んできました。

こうした背景を踏まえ、東京海上スマートモビリティでは、グループ内に点在するデータやノウハウ、今後蓄積されていく課題やその打ち手等を集約し、従来の保険領域とも連携しながらより高度な価値を創出していきます。

独自の強みや具体的な事業内容について教えてください

原田

モビリティに関する社会課題は、ドライバーや車両管理者だけでなく、運送事業においては荷主、多岐にわたる貨物と配送方法、生活者ニーズ等が複雑に絡み合っています。また日本に存在する運送事業者のうち、約9割を中堅・中小企業が占めるマーケット構造です。彼らが大企業のような業務の高度化等を実現するハードルは非常に高く、企業の垣根を超えた横連携を行いにくいという業界事情もあります。

こうした状況を加味すると、物流業界に属さず、中立的な立場から事業者同士の配送網の間を取り持てるのは、東京海上スマートモビリティだからこそ果たせる役割だと思います。これからご説明する3つの強みを活かし、モビリティに関係する様々なプレーヤーと業界横断で連携しながら、サステナブルな事業サイクルを構築していきます。

私たちの1つ目の強みは、先ほど亀井が申し上げた東京海上グループが有するデータやノウハウの活用です。東京海上日動の「車両・人・モノ」に関するデータや、東京海上ディーアールの事故削減につながるリスクコンサルティングサービスがその代表例です。東京海上スマートモビリティがグループ連携の中核を担うことで、モビリティソリューションをより機動的に開発・提供していきます。

2つ目は、先進的なテクノロジーの活用と異業種パートナーとの連携です。東京海上グループには、国内のみならずグローバルな知見を活用できる体制が整っています。また、個性豊かな異業種パートナーとの積極的な連携・協業によって、東京海上グループだけでは生み出せないシナジーを創出していきます。

3つ目は、課題発見につながる多様な顧客接点の活用です。東京海上グループではこれまで、「車両・貨物・倉庫」を扱う民間企業や自治体を含め、幅広いお客様と強固な関係性を築いてきました。これらの顧客接点を活かし、企業や自治体が直面している重大な課題を的確かつ迅速に把握し、新たなソリューション開発に応用していきます。

亀井

東京海上スマートモビリティでは、独自アプローチで、移動や物流の最適化を目指します。

まずはニーズの高い個社向けサービスからスタートし、企業や業界の垣根を超えた中継輸送・混載のマッチング実現、需要予測等を通じた物流そのものの効率化へと事業を拡大していこうと考えています。

直近の取り組みとして、2024年4月より東京海上日動と連携したフリートマネジメントサービス「MIMAMO DRIVE(ミマモドライブ)」を提供します。これには東京海上グループの事故削減・事故データ解析ノウハウを活かしています。社有車の走行を安全運転スコアとして可視化し、運転の改善を提案することで、企業の車両管理や安全運転等をサポートします。また車両の利用状況や管理情報を可視化することで、お客様の業務効率化を支援しています。

その他にも、直近では「2024年問題」で対応が急務となる労務管理サービスの提供などを検討中です。

未来に向けて、どのようなビジョンを描いていますか

原田

モビリティソリューションに取り組む企業は他にもありますが、弊社のユニークなポジションや強みを武器に、安全性の向上とコストの抑制を両立します。

先ほど話題に上がった、中継輸送・混載のマッチング実現のように、この領域における課題の本質は、運び方の効率化ではなく、移動の無駄をなくしていくことだと認識しています。非常にチャレンジングな試みですが、数年後に振り返ったときに、東京海上スマートモビリティがあったから社会全体で移動の無駄をなくすことができたと思っていただけたら幸いです。

そのために、私たちが提供するソリューションを様々な事業者にしっかりと活用していただくことが最初の一手だと考えています。

亀井

私はプロダクトマネージャーとして、多くの中堅・中小企業を訪問し、経営者やそこで働く方々と会話を重ねてきました。皆様、会社や業界を、そして社会を良くしたいという想いで仕事に向き合われています。こういった想いをもった企業と共に、業界全体の成長を支えていきたいと考えています。

物流業界には、まだまだDX推進の余地があります。プロダクト”デザイン“というと、表面的なデザインや商品そのものを作ることを想像されることが多いですが、中堅・中小企業と向き合ううえで「サービスを導入して終わり」ではなく、「とことん一緒に汗をかく」姿勢が大切だと考えています。私たちのサービスを使いこなした先に広がる未来図をしっかりと共有し、お客様と二人三脚で粘り強く取り組んでいきたいです。

原田
そうですね、目の前のお客様にしっかりと寄り添い、一歩ずつ着実に、より良い社会の実現に向けて進んでいきましょう。
  • 記事の内容は、取材当時のものです