CEOレター

グローバル保険グループの
総力を結集し
お客様や地域社会の
“いざ”をお支えする
Good Companyをめざします。

取締役社長 グループCEO
小宮 暁

就任1年を振り返って

いかなる事態に直面しても、お客様や地域社会の“いざ”をお支えし続けるという“想い”を胸に

はじめに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けられている全ての方、自然災害によって被害を受けられた全ての方に、心からのお見舞いを申し上げます。
振り返れば、就任初年度は激動の1年でした。昨年は、一昨年に引き続き、2年連続で国内で大規模な自然災害に見舞われ、多くの方々が被災されました。今年は、年明けから新型コロナウイルス感染症が地球規模のパンデミックを引き起こし、今なお世界中で多くの尊い命が失われています。また、オリンピックをはじめとした、各種イベントは延期もしくは中止となり、経済活動も停滞を余儀なくされるなど、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界恐慌以来とも言われる巨大な負のインパクトを私たちの社会に及ぼしています。更には、追い打ちをかけるように発生した、7月の九州地方を中心とした豪雨は、広い範囲に甚大な被害をもたらしています。
保険はリスクをお引受けし、お客様や地域社会の“いざ”をお支えする事業ですので、いかなる事態に直面しても、経営の屋台骨が揺らぐようなことがあってはならない。その想いはいつも私の真ん中にあります。そして、そのために、リスクを地理的にも事業的にも商品的にも分散させ、事業を安定化させる必要があります。一連の自然災害、そして足元のコロナを機に、改めてこの想いを強くしています。
こうした考えの下、当社グループでは、過去15年ほどの時間をかけて、日本の自然災害と相関の低い海外事業を拡大することで、リスク分散を進めてまいりました。2019年度は米国富裕層市場で業界屈指の成長を実現しているPureグループを買収した他、ブラジルにおきましても、住宅ローン市場で最大のCaixaグループと、保険合弁会社を設立することに合意しました。
そうした中で、就任以来、私が大切にしてきたのは、お客様、地域社会、株主、社員といったステークホルダーの皆様との対話です。この1年間、可能な限り時間を割いて、各ステークホルダーにお会いし、当社グループの課題やめざすべき将来像、その中での私の考え方などについて、様々な議論を交わしてきました。しかし、まだまだ十分ではないというのが本音です。今後も多くの機会を設け、皆様ともっともっと対話していきたいと強く願っています。

東京海上グループの優位性・強み・パーパス(存在意義)

M&A による分散の効いたビジネスモデル

当社グループ最大の優位性は、「分散の効いたビジネスモデル」を有していることです。国内では、当社グループのオリジンであり、業界トップの東京海上日動を中核に、お客様のニーズに合致した商品・サービスをお届けすることで、持続的にマーケットシェアを拡大し、安定した収益を創出しています。グループ利益の約5割*1を占める海外では、先進国市場で強固なスペシャルティ保険*2の事業基盤を構築しており、とりわけ世界最大の保険市場である米国におきましては、企業分野でトップ10の地位を確立し、その中でもスペシャルティ保険の分野ではトップクラスプレイヤーとなっています。また、新興国では、市場規模が大きく、高い成長が見込める地域で戦略的に事業を展開し、その成長を取り込むことで、リスクの地域分散を図っています。実際に、東南アジア最大の保険市場であるタイでは、2018年度に買収しましたSafety社と当社グループの既存現法との統合が2020年2月に完了し、いよいよタイ第3位の新会社が本格稼働しましたし、ブラジルのTMSRは100億円規模の利益を生み出せる会社にまで成長しています。
こうした優位性の確立にはM&Aが大きく貢献しており、その実行力も当社グループの大きな強みです。当社グループには、(1)カルチャーフィット、(2)高い収益性、(3)強固なビジネスモデル、というM&Aの3原則があります。この3つの条件を満たす会社だけをM&Aの対象としているのですが、とりわけ、カルチャーフィットが重要だと考えています。事業を通じて「お客様や地域社会のあらゆる“いざ”をお支えする」という当社グループの価値観を共有できるか。すなわち、それぞれの地域やマーケットにおいて高い収益性や、強固なビジネスモデルを有するだけでなく、What is our business for?—何のためにビジネスをしているのかというパーパス(存在意義)が合致する会社であることが重要なのです。だからこそ、地域やマーケット、ビジネスモデルなどが違っても、共通のパーパスの下、互いにリスペクトして学び合い、お客様や地域社会のために、専門性や知見をスムースに交換することが可能となります。そして、優れた人材を国内外に最適配置し、その専門性・アイディアをグループの戦略の真ん中に取り込むことで、グループ全体のレベルアップにも繋げています。こうした高い専門性を持った人材・グループ総合力も当社グループの大きな強みです。

  • *1 自然災害やコロナの影響を除いた実力値ベース
  • *2 一般的な自動車保険や火災保険ではなく、賠償責任保険や医療保険など、企業向けに提供する特殊な保険

Good Company として、社会を支え続ける

今は不確実、不安定、複雑で不透明な時代です。コロナにより社会の不確実性が更に高まり、世界中の人々が、社会のサステナビリティ、将来の安心や安全について、本当に大丈夫なのだろうか、と強い関心を払うようになり、一方で、だからこそ企業は何のために存在しているのかが、改めて問われていると感じています。
こうした中で、近年、全てのステークホルダーに貢献すべきとする“マルチステークホルダー資本主義”への転換が叫ばれていますが、当社グループは、創業時から、安心と安全をお届けすることにより、お客様や地域社会の“いざ”をお守りすることをパーパスとしてきましたし、これは、将来も、どんな時代にあっても、決して変わりません。
全てのステークホルダーの皆様に、それぞれが求める価値を常に提供し続けることは、決して簡単なことではありませんが、その道を探し続けていく。そして、現状に満足することなく、より一層の良い会社をめざし続けよう。こうした想いを“To Be”に込めた“To Be a GoodCompany”はグループで世界共通のスローガンになっています。
こうした想いを一層強くしたのは、2011年3月に発生した東日本大震災での経験です。
当時、地域営業を統括する営業開発部長だった私は、震災発生から1週間後に仙台入りしました。まず現場に足を運び、津波で何もなくなった浜辺や、瓦礫の山となった街を見て言葉を失うと同時に、これから自分たちが「とてつもなく大きな仕事にとりかかろうとしている」と実感しました。長期戦を覚悟して被災地の状況を経営陣に報告したのですが、当時の社長が最終的に下した結論は、「未曽有の事態なのだから、通常の発想を捨て、困っているお客様のために、5月末までに保険金のお支払いの8割を完了する」というものでした。つまり、わずか2カ月足らずで18万件を超える膨大な件数のお支払いを実行することになったのです。
正直驚きましたが、大きな困難に直面した時の当社グループの社員、代理店さんは、身内ながら本当に力強く、頼もしい存在でした。「被災された方々に一日も早く保険金をお届けしなければ」という強い使命感の下、昼夜を問わず、一丸となって対応してくれたのです。途方に暮れる私たちを突き動かし、奮い立たせるもの、それは「世の中の役に立ちたい」「誰かの役に立ちたい」という想いでした。こうした想いを持った大勢の社員が全国から自ら志願して被災地の応援に出向き、残った社員も応援に行っているメンバーの穴を自分たちでしっかり埋めようと頑張ってくれました。あらゆる業務に優先して災害対応にあたっていましたので、とても営業活動ができる環境にはありませんでしたが、被災された方々に迅速に保険金をお届けできたのは勿論のこと、当社グループの対応がお客様からのご支持に繋がり、結果としてマーケットシェアを大きく拡大することとなりました。事故や災害時にお支払いする保険金は、お客様にとって「明日の大きな力」になる。だからこそ私たちはお客様や地域社会の“いざ”をお支えするために、誇りを持って、一丸となって、全力で取り組む。そして、その結果として成長する。これが当社グループの原点なのです。
こうした一体感は日本だけに留まりません。例えば一昨年、日本で過去最大級の自然災害が発生した時には、海外のグループ会社のCEOから「何か自分たちにできることはないか?」とすぐに電話が入りましたし、2017年に米国で大きなハリケーン被害が相次いだ際にも、日米間、様々なレイヤー(階層)で連絡を取り合う。そんな一体感が国内外で自然に生まれてくるグループなのです。
こうしたグローバル保険グループの連携を更に強化していくため、私はCEOそしてCCO(チーフカルチャーオフィサー)として、国内外の役員・社員との対話を大切にしています。そして、皆にも「徹底した議論を」「コミュニケーションにやり過ぎはない」と話しています。コミュニケーションを通じて、東京海上グループの一員であることの意味や価値を全員と共有し、それに誇りを持ち、一体となってお客様・地域社会に貢献することで選ばれ、その結果として利益を得て、企業価値が上がっていく。──そんなサイクルを回していくことによって、当社グループは全てのステークホルダーにより多くの価値を提供し、長期的に成長し続ける。そんな企業グループをめざしています。

東日本大震災前後の東京海上日動のマーケットシェア改善幅の推移

2008 +0.16pt / 2009 +0.11pt / 2010 +0.25pt / 2011 +0.28pt / 2012 +0.41pt(営業統計保険料ベース)

中期経営計画の進捗状況

自然災害やコロナの影響下にあっても実力値は着実に向上

2018年4月からスタートした3年間の中期経営計画において、当社グループでは修正純利益4,000億円以上、修正ROE10.0%以上というKPIターゲットを掲げています。その中で、2019年度の期初計画は、修正純利益で4,000億円、修正ROEで10.4%としていましたが、昨年も国内で大きな自然災害に見舞われたことに加え、年明けからは新型コロナウイルスの影響も受けた結果、実績はそれぞれ2,867億円、8.2%となりました。一方で、こうした自然災害やコロナの影響を除いた、当社グループの実力値で考えれば、概ね計画通りの着地であったと考えています。
2020年度については、コロナの影響を除いた実力値としての修正純利益は4,100億円、修正ROEは12.2%を見込んでいます。これは、国内外共に事業の基調が順調であることに加え、2019年度の北米におけるリザーブ積増の反動やPureグループの新規貢献などによるものですが、実力値は計画通りに向上していると評価しています。

フォワード・ルッキングで事業を分析し、ポートフォリオを最適化

また、具体的な取り組みとしては、「ポートフォリオの更なる分散」「グループ一体経営の強化」「事業構造改革」という3つの重点戦略を推進しています。これらの戦略を実行することによって、現中期経営計画で掲げるKPIターゲットの達成は勿論、持続的で長期的な成長に資する“社会課題を解決する力”の向上を図っています。
まず、「ポートフォリオの更なる分散」からご説明します。日本は近年、大規模な自然災害に見舞われています。2019年度に発生した自然災害に対する業界全体の発生保険金は1兆円を超え、その中で当社グループも約3,300億円をお支払いすることになります。一方で、これまでに進めてきたリスクの地理的・事業的分散により、2019年度の「平年を超える自然災害の発生保険金」を、グループ全体の利益の2割程度に抑えることができました。ただし、足元で自然災害が連続して発生する状況を踏まえますと、私としては2割でもまだ大きく、より一層のリスク分散が必要だと考えています。
2019年度は、米国富裕層市場で業界屈指の成長を実現しているPureグループを買収しました。成長を支える強いビジネスモデルを有する同社は、当社グループの既存ビジネスとの重複も限定的で、大きなシナジーが期待できます。そして何よりも「カルチャーフィット」、すなわち“何のために事業を行うのか”、“何を大切にしているのか”といった経営の価値観を共有できる企業であったことが、買収の決め手となりました。この買収により、当社グループはより分散の効いたポートフォリオの構築と、事業規模や収益面での拡大、そして資本効率の向上を実現できると考えています。なお、当社グループでは、北米が海外事業の利益の約8割を占めていますが、北米のグループ各社は、それぞれの対象とする顧客層や商品が異なっており、地域は重複していても「商品構成」の違いによるリスク分散が可能となります。
新興国では、ブラジルの住宅ローン市場でシェア約7割を有するCaixaグループと合弁で保険会社を設立し、収益性の高い住宅火災保険マーケットへの参入を決定しました。この合弁会社の設立によって、更なる地域分散と収益安定化を実現できると考えています。
更に、事業ポートフォリオを最適化するには、事業を「買う」だけでなく、フォワード・ルッキングで各事業を分析し、入れ替えて、常により良きポートフォリオを戦略的に追求していくことも必要です。欧州の再保険子会社TMRは、当社グループが本格的に海外展開をする礎を築いた重要な会社でしたが、再保険市場の動向や、元受事業を中心とした足元のポートフォリオでリスク分散が図れてきたことを考慮し、2018年度に売却を実行しましたし、2019年度にはエジプトにおける生命保険事業TMFTの株式も売却を決定しました。
当社グループでは地域や規模、実施時期などを予め決めてM&Aを実施しているわけではありません。また、M&Aはそれ自身が目的ではありません。地域・事業内容・商品構成などの面でリスク分散が効き、前述の買収3原則に適合した良い会社があれば、今後も柔軟かつ積極的にM&Aを実行していく方針です。そして、足元も当社独自のロングリスト・ショートリストに基づくパイプラインを持っています。

多様化・増大するリスクに対応し、新たな成長の柱を創出

一方、国内ですが、収入保険料の半分を占める自動車保険は足元において重要な柱ですし、実際に当社グループの成長を牽引しています。そして、今後も当面は成長を維持できると考えていますが、それでも長期的に見れば、人口減少やシェアリングエコノミーあるいは自動運転の進展などにより、減少していくことは間違いありません。従いまして、自動車保険マーケットが大きく縮小し始めないうちに、マーケットの変化を的確に捉えて、自動車保険以外の分野で、新たな成長の柱を創出していく必要があります。
テクノロジーの進展や企業のグローバル化など、企業を取り巻くリスクは多様化、増大している一方で、日本では中小企業を中心に新種保険の普及率はまだまだ低く、大いに成長余地があると考えています。当社グループはこれまでも環境変化とそれによって生じるリスクをしっかりと捉え、お客様のニーズに合った商品・サービスをお届けすることで、社会課題の解決に貢献し、その結果として成長することができました。創業当時は海難事故から守る海上保険であり、高度経済成長期はモータリゼーションを支える自動車保険でした。次の時代は何なのか、サイバーかもしれないし、ヘルスケアかもしれない。お客様に一歩でも二歩でも近づくことで、安心と安全をお届けする。そうしたアプローチを通して、東京海上日動やグループの将来の成長を牽引する次の事業を創出し、時代に適合した最適なポートフォリオに変革していきたいと考えています。

ポートフォリオの分散

[リスクの分散] [2014年度 分散効果44% | 分散後リスク量2.8兆円 | 分散前 5.0兆円 | 国内損保(保険引受)自然災害リスクのコントロール 21% | 国内損保(資産運用)政策株式リスクの削減 33% | 国内生保金利リスクコントロール保障性商品へのシフト 21% | 海外保険事業拡大に伴う分散向上 14% | その他:金融・一般事業、出資に係る為替リスク等 10%] → [2019年度 分散効果48% | 分散後リスク量2.7兆円 | 分散前 5.2兆円 | 国内損保(保険引受)自然災害リスクのコントロール 24% | 国内損保(資産運用)政策株式リスクの削減 24% | 国内生保金利リスクコントロール保障性商品へのシフト 16% | 海外保険事業拡大に伴う分散向上 24% | その他:金融・一般事業、出資に係る為替リスク等 12%]
[保険料とリスク量*の推移]  [リスク量 | 2014 2.8兆円 | 2019 2.7兆円 [適切にコントロール] ] [+生命保険料正味収入保険料 | 2014 3.3兆円 | 2019 4.5兆円 [持続的成長] ] *:ESRのリスク量(99.95%VaR、税後ベース)

優れた人材をグローバルに最適配置し、グループのシナジーを追求

2つめの重点戦略が「グループ一体経営の強化」です。当社グループはかねてより、グループ一体経営を推進し、ステークホルダーの皆様から一定のご評価をいただいておりますが、私が思い描く「人と組織の活性化」という目標への到達には、まだ道半ばだと認識しており、その実現には社員の能力や叡智をもっとグローバルに発揮できる体制の構築と、マネジメントの意識も含めた組織の実力を更に強化していくことが必要だと考えています。
当社グループが持続的に成長していくためには、まずは国内外のグループ各社、一つひとつの部門が専門性に磨きをかけ、それぞれのマーケットでお客様から最も必要とされる存在をめざすことが重要です。保険は形のない商品を扱うことから「People's Business」、人が重要と言われていますが、社員が高度な専門性を備えたプロフェッショナルでなければ、お客様に高い価値を提供することはできません。加えて、現在のような変化の激しい時代では、失敗を恐れずに挑戦する姿勢も不可欠です。そこで、当社グループでは、専門人材の確保と育成に力を注ぐと共に、社員の能力と経験を最大限に引き出すよう、多様性の尊重、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいます。
グループが“one team”となり、グループ各社のベストプラクティスや叡智、ノウハウ、経験などを共有し、活用することで、ビジネスに一層磨きをかけていくことができれば、他社が容易に真似できない、当社グループならではの独自能力が形成されていく、と私は信じています。
そのために、当社グループでは、グローバルなタレントマネジメント—すなわち優れた人材を、その国籍や所属企業などの枠を超えてグローバルに最適配置することで、それぞれの専門性やマネジメント能力などを最大限に発揮できる仕組みづくりに注力しています。実際、当社グループでは、買収した会社の経営トップが、ホールディングスの海外保険事業や資産運用のCo-Headとして活躍していますし、会社・国を跨いだ異動がグローバルに行われています。
こうしたグループ一体経営の取り組みの成果は、既にグループシナジーとなって定量的にも現れており、「成長」「資産運用」「資本」「コスト」の4分野において、年間合計で約350億円の利益貢献に繋がっています。

最新テクノロジーを駆使してビジネスの革新を加速

そして3つめの重点戦略である「事業構造改革」としては、「革新的商品・サービス」「販売チャネルの変革・強化」「生産性の向上」などの施策を推進しており、これらの改革実現に向けた重要なカギとなる「テクノロジーの徹底的な活用」に力を注いでいます。例えば、自動車保険における事故対応業務を大幅に効率化・迅速化するソリューションとして、AIとドライブレコーダーを活用した新サービスを3月から導入しました。当社グループでは、お客様の更なる安心・安全なカーライフの実現を目的に、ドライブレコーダーを自動車保険の特約として、日本で初めてお客様に貸与していますが、新サービスでは端末が録画した事故映像を基にAIが5分程度で事故状況を再現し、当事者間の責任割合を過去の判例などから自動的に判定します。事故に遭われた場合、混乱してしまうことも多いですが、この仕組みにより、お客様から事故状況を詳しくご説明いただいたり、当社グループの担当者が責任割合を判断するために判例を調べたりする時間が削減されるため、事故の早期解決や迅速な保険金支払いに繋がります。今後も新しいテクノロジーの研究開発を推進し、業務革新や新サービス、新ビジネスの実現に向けた仮説検証のサイクルを加速させていきます。
これら中期経営計画に基づく施策の結果、株主価値の増大も着実に進んでおり、当社グループ設立の2002年4月1日を100とした2020年3月末のTSRは、当社グループの355に対して欧米ピア*が232、TOPIXは185と、当社グループのTSRはピアやマーケット水準を大きく上回っています。また、直近5年間のEPS成長率も、当社グループ+2.7%に対して、欧米ピアの中央値が+1.9%、最大値は+6.6%と、ピア対比で遜色ない水準です。この様に当社グループは資本市場から一定の評価を得ているものと考えています。

  • * Allianz, AXA, Chubb, Zurich の4社

高いトラックレコード

[TSR*1] パフォーマンス(20.3末以前) 3年 5年 | 東京海上 119 130 | ピア*2 104 115 | MSCI World Insurance 97 109 | TOPIX(保険業) 94 104 | TOPIX 99 103
[EPS*3 CAGR(2014-2019)] [ピア*2] 中央値 +1.9% |  最大 +6.6% |  最小 ▲5.0% |  TOKIO MARINE +2.7% 出典:Bloomberg *1:Total Shareholder Return (TSR)  :配当再投資後のキャピタルリターン、2002年4月1日の株価を100とした指数 *2:Allianz, AXA, Chubb, Zurich *3:財務会計ベース

持続的な成長に向けて

グループの強みを活かして社会課題の解決に貢献

近年、ESGやSDGsなど、企業による社会課題への取り組みが注目されています。繰り返しになりますが、当社グループは、創業以来、事業を通じて安心と安全をお届けし、お客様や地域社会の“いざ”をお守りすることで、時代と共に変化する様々な社会課題の解決に貢献してきました。そして、その結果として、自らも持続的な成長を果たしてくることができました。つまり、「事業を通じた社会課題の解決」は当社グループのパーパスそのものなのです。これからも時代の変化を的確に捉え、人々や社会が直面する課題に向き合い、この解決に寄与することによってビジネスを創出し、グループの持続的成長を実現していきます。
足元では、地球規模の気候変動による自然災害の激甚化が世界各地で大きな脅威となっています。当社グループは気候変動に対して、保険会社として、機関投資家として、またグローバル企業の一員として、かねてより真正面から向き合ってきましたが、昨今の自然災害の状況を踏まえますと、「従来とはレベルの異なる対応」が必要と考えています。とりわけ重要なのは、有事の際に保険金を迅速にお支払いすることです。
実際、国内では、2019年度も延べ2.2万人の社員が全力でその対応にあたりました。また当社グループは、「テクノロジーを活用した保険金支払いの更なる迅速化」や、「被災者の声を反映させた保険商品の開発」、保険金のお支払いだけに留まらない「防災・減災を実現するための情報やサービスの提供」などに取り組んでいますが、このスピードを更に上げていきたいと考えています。
また、機関投資家としての立場からも、投資判断にESGに関する基準を組み込んだり、再生可能エネルギーの普及を目的としたファンドを創設するといった取り組みを進めていますし、国内のTCFDコンソーシアムの創設メンバーでもある当社は、グローバル企業の一員としても、国際イニシアティブへの参画を通じて、気候変動問題に関する議論やTCFDに沿った財務情報開示のあり方の検討などをリードしています。
今、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界中の人々の生命と健康、経済活動に多大な影響を及ぼしています。現時点ではその終息時期を正しく予測するのは困難ですが、今回のパンデミックを機に世の中の変化のスピードが一気に加速したことは確実です。これからの“With コロナ”、“After コロナ”の時代には、私たちの生活様式は勿論、行政サービスや企業ビジネスの形態も大きく変容していくのは間違いありません。
このように変化が激しく、不確実性の高い時代には、リスクに対する人々の意識が高まり、保険会社が社会に対して果たすべき役割もより一層大きくなります。
実際、当社グループでは、この数カ月の間にも、コロナ禍における課題解決に向けて、様々な新しいアプローチを行ってきました。例えば、国内では東京海上日動が、特定感染症を補償するものの、コロナウイルスは補償対象外となっていた商品について、リスクコントロールを行った上で、コロナウイルスも遡及して補償対象とする改定を実施しました。また、北米やアジア地域ではトップマネジメント・カンファレンスをオンラインで開催し、グループ各社の経営陣達がコロナ禍のビジネス環境における脅威と機会について話し合い、多くの新しい知見を共有しました。この他にも、グローバルベースでタスクフォースを立ち上げ、“With コロナ”、“After コロナ”を踏まえて、中長期的に事業環境がどの様に変化するのか、その事業機会をリスク選択能力など、当社の強みを持ってどの様に取り込んでいくのか、グループ一体となった検討が進んでいます。
感染症のパンデミックや大規模自然災害は、その姿形を変えて今後も繰り返し発生すると予想されます。東京海上グループは、これからもグローバル保険グループの総力を結集して、こうした災害への対応はもちろん、様々な社会課題の解決に積極的に寄与していきます。そして、お客様と社会に安心と安全を提供し続けることによって、自らも持続的な成長を実現してまいります。今後も一層のご支援を賜りますようお願い申しあげます。