テクノロジーで休暇休職管理の分野を牽引する

2024年3月29日

2012年に東京海上グループの一員となったReliance MatrixのGordon Smithは、保険業界の外で起きている出来事に対応するために作られた新たな組織において、Chief Solutions Officer(CSO)というユニークな肩書きを持っています。
「対処すべき事項はそこにある」と彼は微笑みを浮かべながら強調します。多くのサクセスストーリーがそうであるように、このサクセスストーリーもニーズを一つ、あるいは二つと満たすことから始まるからです。

Gordon Smith, Chief Solutions Officer(CSO), Reliance Matrix

Matrix Absence Management社は、1987年にカリフォルニア州北部の都市サンノゼで労災保険請求管理会社として設立されました。それは、歴史的にも非常に必要とされる時期に、地元で生まれた素晴らしいビジネスでした。つまり、ハイテクブームがシリコンバレーと世界の状況を一気に変えることになるからです。そして、クリントン大統領が署名した画期的な育児介護休業法(FMLA:Family and Medical Leave Act)は、米国の雇用情勢を恒久的に変えることになります。要するに、FMLAは50人以上の従業員を抱える雇用主に対して、さまざまな個人的および家族関連の病気などの状況による休暇と、休暇中の雇用補償を義務付けたのです。
1997年、Matrixはその高いテクノロジーと新しい法律を利用して、初の正式なFMLA対応のアウトソーシングプログラムを開始しました。当時、雇用主、保険ブローカー、コンサルタントは、法令に準拠するためのプログラムを実施することはおろか、法令の全容を理解することもできない状況でした。しかし、そのような中、重要な顧客の一つであるフィラデルフィアのReliance Standard Life Insurance Companyは、その価値を認めていました。親会社であるDelphi Financial GroupがMatrixを買収し、統合への道筋をつけ、2023年にReliance Matrixとして新たな組織の一歩を踏み出したのです。
そして年末までにReliance Matrixは、Spring Consulting Groupが隔年で実施する業界調査において、30社以上の競合企業の中、支援従業員数ベースで全米ナンバーワンのAbsence Management(休暇休業マネジメント)サービスプロバイダーに選ばれました。

Smithは故郷のアイルランド、アルスター大学で電子工学のHigher National Diploma(高等国家学位)および英国コンピュータ協会公認のコンピューティング資格を取得しました。ヨーロッパおよび米国で15年のITキャリアを積んだ後、2003年にバイスプレジデント兼最高情報責任者(CIO)としてMatrixに入社したのです。保険アウトソーシング管理会社(TPA)は、さほど華やかな職場ではありませんでしたが、ゴードン自身は異業種から来たこともあり、他機関との比較ではなく、より広い視野で将来を見ていました。フェイスブックの登場はまだ1年先でしたが、シリコンバレーではすでにイノベーションの種が芽吹いていました。
「私たちのお客様である周辺のハイテク企業は、爆発的な成長を遂げようとしていました。そして、従業員の休業や欠員の管理には新しく複雑な問題が存在していました。これら創成期のテクノロジーブランドの文化は、必然的に事業拡張とインタラクティブな顧客体験に重点を置いていました。そして、テクノロジーによって社会を推進しようとする従業員たちは、雇用主と同じアプローチをとったのです」と、Smithは思い出深く語ります。
雇用主がFMLAに準拠するために外部からの支援を求めるようになるにつれ、Matrixは今では一般的な機能となっている安全なオンライン申請受付や業界初のモバイルアプリなどを新しく導入していきました。共通して一貫していたのは個人に焦点を当てたアプローチであり、Matrixの何倍もの規模の競合他社を含め、実質すべての競合他社とは大きく異なっていました。
「世界中でテクノロジーが導入されたことで、ユーザーの期待は変化し、私たちのサービスは業界を問わず、すべて最高のものと比較されるようになりました」と、Smithは2018年にMatrixのSolutions Groupを結成し、CSOに就任した際に語っていました。「バブルの外で起こることはすべて、バブルの中にも影響を与えるのです」
ITを所管する組織とSolutionを提供するグループの違いは、意味としても程遠いものです。
「私たちは、すべてのお取引とお客様との接点において最高のユーザーエクスペリエンスを提供しなければなりません。それは、単にテクノロジーで市場をリードするのではなく、包括的に、常にお客様とその従業員に寄り添うことで市場をリードすることを意味します。それが永続的な成功の方程式なのです」と、Smithは言います。

イノベーターからディスラプターへ

一般的に、TPAの文化と保険会社の文化は異なるものだと言われています。リスクを引き受ける側である保険会社は、一般的にプロセス重視で、契約文言の確実性にこだわります。これとは対照的に、TPAは優れたサービスを提供し、特にMatrixの場合もそうですが、テクノロジーによってカスタマーエクスペリエンスを進化させることで成功を収めています。
「起業家精神は私たちのDNAです」とSmithは言います。「私たちのお客様は、私たちTPAのビジネスがどのようなものかを知ろうとはしません。お客様にとってはスタッフィングを整えビジネスを運営することが大切だからです。従業員の欠員がお客様に与える影響を理解し、それを解決するのが私たちなのです」
Absence Radar®は、従業員の状況を連続する12カ月間にわたって、今後の予定や過去の記録を見やすいカレンダー形式でリアルタイムに提供するインタラクティブなプラットフォームです。直感的に状況が理解できるこのような製品は市場に存在せず、Absence Radarは2021年にReliance Matrix初の米国特許を取得しました。
簡単に言ってしまえば、「人事チームの一員になり、彼らの仕事を楽にしてあげよう」というものでした。「マネージャーや直属の上司に実用的な情報を渡すと、状況は変わります。彼らは1日単位、1週間単位で人員を配置しなければなりません。また、機敏に動き、生産性と士気を維持しなければならないのです。こうしたことにすべて対応するサービスのレイヤーはTPAの領域には存在しなかったものです」と、Smithは振り返ります。
州の障害者休職制度や有給休職制度が普及したことで、誰が、なぜ休職しているのか、いつフルタイムで仕事に復帰する予定なのかを上司が把握することがさらに重要になりました。これは大きな変革です。しかし、従業員への影響を考えてみましょう。例えば、一回の出産休暇で、会社からの短期障害補償、州指定の有給家族・医療休暇、病院賠償保険のような選択制の追加医療保障を受ける資格を得ることができるのです。これらの福利厚生制度や資格は元来、それぞれが独立し、管轄地域や雇用主、その他の要因によって異なるものです。当然のことながら、福祉手当、特に任意のものが見落とされることは珍しくないのです。
「単に使い忘れた補償のためにこれまで保険料を支払っていたことに後から気づいたとしたら、どう感じるか想像してみてください。でも、それはこの世界では珍しいことではなかったのです。」と、Smithは話します。
そのため、Reliance Matrixは、企業、法令、または有給の福利厚生時間に基づくかどうかにかかわらず、保険金請求を開始するために電話またはオンラインで請求した従業員とその家族が受給資格のすべてを自動的に申請できるようにすべての福利厚生と受給資格を統合しているのです。

「イノベーションからディスラプションへの飛躍的な変化です」と、Smithは指摘します。「私たちは正しいことを実現するために今までの常識の殻から抜け出そうとしているのです」 競合他社はその状況を注視し、ギャップが現れたら、できる範囲でそのギャップを埋めようと動きます。ですから、前進を続けることが重要なのです。次のベストプラクティスは、Reliance Matrixの最も先進的な企業顧客に導入されている、医療統合です。雇用主(通常は独自の医療保険プランのスポンサー)は、許容されるすべての福祉手当を確認し、従業員に支払われるようにするために医療請求データへの安全なアクセスをReliance Matrixに認めます。Reliance Matrixは、独自のAIを駆使し、潜在的な給付金や休職の引き金となりそうなデータを精査し、従業員と顧客に最高の価値を提供しています。
「こうしたことはスタートアップ企業がとても上手です。彼らは、どうすればもっとうまくやれるかを考えるのではなく、なぜそれをするのか?を問うのです。常に現状に挑戦し、話すことよりも耳を傾けることをしなければ、本当の意味でのディスラプションは起きません」と、Smithは強調します。

地平線の向こうへ

2023年、Reliance Matrixは、従業員が休職する時間を計画するために設計された対話型ツール「Absence Blueprint®」で二つ目の米国特許を取得しました。現在、このようなツールは業界に存在しません。
「これまで私たちは、業界と同じように、実際の休職の理由とその取り方に焦点を当ててきました」とスミスは言います。「しかし、従業員や最前線にいるHRのビジネス・パートナーと話をすると、実際の休職前にどのような福利厚生、給与の代替、雇用保障があるかを知ることに大きなチャンスがあると理解できます。人それぞれ、休職それぞれは一つ一つが違うのですから」
「それは従業員にとっては大きなストレスであり、そうした重要な質問に答えようとするHRのパートナーにとっても同様に大きな負担になるのです」
Absence Blueprintは、各従業員や雇用主ごとに連邦および法定休暇休職規則を適用し、雇用主の方針や福利厚生プログラムに組み込んでいます。そうすることにより、例えば、出産を控えている場合、どのようなことが予想されるかが一目でわかるようになるのです。
「Absence Blueprintでは、従業員がさまざまなパラメータを操作することで、たとえば、休職や報酬を最大化するために、さまざまな可能性を見ることができます。そして、そのデータをもとに、従業員は配偶者、マネージャー、介護者とリアルタイムで計画を共有することができ、全員が同じ理解でいることができるのです」と、Smithは説明します。

Reliance Matrixの未来には、さらに多くの特許技術が控えています。独自の知的財産を保護することに加え、これは非常に重要なビジネス戦略なのです。
「その戦略の核心は、特許を追求し取得することで、現在と将来のお客様に対して、私たちがお客様のビジネスや課題について独自の方法で考えているという事実をお見せできることだと思います」と、Smithは語ります。「それは正統性の証であり、私たちをソート・リーダーとして位置づけるものです。このような機会の中、業界のリーダーとビジネスをしたいと思わない人はいないでしょう」
さらに、特許取得済みのソリューションポートフォリオを構築することは、最終的に私たちおよび東京海上の世界的な価値を高めることになるとSmithは強調します。「東京海上は、世界各地のさまざまな専門市場において、世界クラスのリソースを集約し、活用する能力を有しています。特許取得済みソリューションは、そうした優位性、すなわち私たちの組織DNAの一部をもう一段階強化するものなのです」
もちろん、市場のディスラプターであることの重要な点は、あるいは結果として、"次のもの"が現れる必然性なのです。Gordon Smithはチャンスしか見ていないのです。
「今日の市場では、AIについて、そしてAIに何ができて、何ができないのかについて、多くの懸念があると思います」と、Smithは言い、「AIがほとんどのビジネスプロセスに組み込まれ、サービスを向上させ、顧客に力を与える時代が、かなり早くやってくると思っています」と、続けました。
「多くの人が恐れているのは、最終的に、より早く、より安く、多くの点でより優れたテクノロジーが人に取って代わり、選択肢としての人による対応が私たちの生活から排除される時が来ることだと思います。
Reliance Matrixでは、そのようなことは決して起こらないと自信を持って言えます。私たちの仕事の中心はサービスであり、人々が助けを必要としているときに助けることです。そして、テクノロジーが全体的に拡大してきても、質問に答え、必要な人を安心させるために、思いやりがあり、知識豊富な人間が常にそこにいなければならないのです。」と、Smithは力説します。
そうした考えをさらに進めて、Smithは続けます。「皮肉なものですが、テクノロジーは多くの人が考えているような私たちの成功への原動力ではないのです。お客様の課題をどう捉え、どう受け入れるかが重要なのです。事実、今日、そして近い将来においても、人材は企業にとって最も価値のある唯一の資産なのです。賢明な雇用主は、福利厚生を人材争奪戦の“武器”として活用し、最優秀な人材を惹きつけ、維持しています」
「そして、私たちはかなり効果的な“ツール”を作っています」