CFOメッセージ

利益成長と規律ある
資本政策の実行を通じて
ROEの向上をめざします。

専務取締役 グループCFO
(グループ資本政策統括)
岡田 健司

2022年8月

当社は中長期ターゲットとして2017年11月に掲げた「修正純利益 5,000億円超、修正ROE12%程度」を達成し世界トップクラスの保険会社に成長した現在、更なる企業価値の拡大をめざしています。次のターゲットは現在検討中ですが、少なくとも「内部成長で引き続き 世界トップクラスのEPS Growthを実現すること」、「ROEの向上と エクイティ・スプレッドの拡大」をめざしており、私はグループCFOとして主に資本政策面からこれを支えています。
当社の資本戦略を簡単に申し上げると、①まず内部成長をベースに、ポートフォリオも戦略的に見直し、資本を創出します。そして、②創出した資本は優良な事業投資に振り向け、③良い案件がなければ株主の皆様に還元するというサイクルを回しながらROEを高めていくというものです。
過去5年、10年平均の資本政策のトラックレコードをご覧いただくと、創出した資本を規律をもって事業投資や株主還元に活用してきたこと、また、事業投資の機会に恵まれなかった期間は株主還元を増やしてきたことがお分かりになると思います。
以下、これらについて詳しくご説明いたします。

資本政策のサイクル

長期的な成長を支えるESG 内部成長:国内の安定収益の持続、先進国スペシャルティ会社の強化、新興国の成長取込みプラスポートフォリオの見直し:戦略的資本リリース、適切なリスクコントロール そこから資本の創出 事業投資:規律ある戦略的M&A、規律あるリスクテイク そこから資本の調整 株主還元:配当の引上げ、機動的な資本水準調整

規律ある資本政策のトラックレコード

過去「5年間」の平均(2017-2021の平均)修正純利益:3,750億円 資本の活用 事業投資:973億円*1 資本水準調整:950億円 普通配当:1,383億円 修正ROEの向上 10.0% 過去「10年間」の平均(2012-2021の平均)修正純利益:3,407億円 資本の活用 事業投資:1,433億円*1 資本水準調整:575億円 普通配当:1,048億円 修正ROEの向上 9.4%
  • *1金額を公表したもののみ合算(Refinitiv Eikonから取得)

内部成長

まず、内部成長(Organic Growth)ですが、これはグループ全体の成長のベースとなります。
当社のポートフォリオの特徴は、①安定した利益を持続的に創出できる国内市場をベースに、②競争優位性があり市場に左右されにくい海外先進国スペシャルティの成長と、③ブラジル、アジアといった新興国の高い成長を取込んでいる点にあります。そして、各グループ会社が、専門性や多様性を発揮し、社会課題の解決にあたることで、お客様や地域社会から圧倒的な支持を得て、結果として国内外とも高い成長性を実現しています。私はグループCFOとして、資本配分などを通じ、各事業が策定する中期経営計画などに深く関与することで、各事業の成長を支えています。例えば、各事業のトップと環境変化への対応、各種戦略の進捗や見直し要否といった観点で論議を行い、グループCFO目線で各事業の主要課題や中計のKPIなどの対話を重ねています。
その結果、2021年度の修正純利益と修正ROEは、それぞれ5,783億円、14.4%と中長期ターゲットとしてきた「修正純利益5,000億円超、修正ROE12%程度」を突破しました。ここには自然災害が平年対比で少なかったことや為替の影響といった、必ずしも実力とはいえない一過性の要因が含まれますが、これらを除いた実力(Normalized)ベースでみても、国内は火災保険の収支改善、海外は先進国を中心に規律ある引受による保険引受利益の拡大等により、修正純利益と修正ROEはそれぞれ5,054億円、12.7%と、中長期ターゲットを達成しました。今後も世界トップクラスの成長を確度高く実現していきます。

修正純利益*2の表
修正ROEの表
  • *2修正純利益の内訳は各事業の事業別利益
  • *3国内損保=TMNF
  • *4国内生保=AL
  • *5その他国内損保や金融・その他事業、事業別利益に含まれない政策株式の売却益など
  • *62020実績3,996億円から一過性の影響等▲464億円(自然災害 約▲110、コロナ 約▲300、為替 約▲60)を控除
  • *72021実績5,783億円から以下の一過性の影響+729億円を控除
    ①自然災害 約+170、②北米キャピタルゲイン等 約+240、③コロナ 約+230、④政策株式の売却益 約+90(売却額が1,000億円を超えた部分)

ポートフォリオの見直し・事業投資

当社は保険会社ですから、保険引受、資産運用に係る“リスク”を取りながら“リターン”を上げています。当社は、「どのリスクを選好するのか(リスクアペタイト)」、「どの程度までリスクを取るのか」、「ROR(リスク対比リターン)は十分か」、「リスクに偏りはないか(分散)」といった観点で経営を行うリスクベース経営(Enterprise Risk Management)をグループ経営の根幹に据えており、そのERM戦略を議論する場として「ERM委員会」を設置しています。私はその委員長として、常にフォワードルッキングで全ての事業の成長性や収益性とそれに対するリスクを確認し、グループ全体視点で最適な事業ポートフォリオとなるよう、資本配分計画を策定しています。
例えば、過去4年間でもPureの買収や、タイにおけるSafety買収および既存現地法人との統合、ブラジルにおける合弁会社設立などの事業投資に加え、DFGによるSSL社のボルトオンM&Aを行う一方で、再保険子会社(TMR)の売却やTMK傘下子会社(Highland)の売却決定など、リスク分散や適切な資本配分、将来の成長性等を考慮しながら戦略的にEntry/Exit案件に取り組んできました。
大型M&Aは、当社の厳格な買収基準を満たす案件のみを実施しておりますが、足元のバリュエーション水準は割高という認識に加え、コロナ禍でカルチャーフィットの確認も難しいので、今は良質な大型M&Aには忍耐強さが必要な時期と捉えています。一方、ボルトオンM&Aは、長年の取引関係がありお互いのビジネスを深く理解している先を買収先としており成功率が高いので、今後も海外グループ会社が有する経験と知見を活かして当社の強みとして着実に実行していく方針です。
また、資本構成の見直しとして、Pure買収時に資本コストも意識し、初めてハイブリッド債を発行しました。今後は、大型の投資機会がある場合、或いは、大型でなくとも複数の投資機会が重なる場合等には、ハイブリッド債の活用も検討していきます。株式の希薄化を防ぎながら、適正な資本水準を維持し、最適な資本構成の実現と長期的なROEの向上をめざしていきます。

柔軟な資本戦略による更なる成長の実現

自己資本(株主資本)| ハイブリッド資本(資本性負債) 規律ある戦略的M&Aの実行 2008年3月買収 キルン社、2008年12月買収 フィラデルフィア・コンソリデイティッド社、2012年5月買収 デルファイ・ファイナンシャル・グループ、2015年10月買収 HCCインシュアランス・ホールディングス社、2020年2月買収(ハイブリッド債を活用) Pure 自己資本の活用とハイブリッド資本の活用を通じ更なる成長投資 成長の取込み、地域・事業分散、資本効率の向上でROEの向上

政策株式については毎年1,000億円以上の売却を進めており、2002年以降で累計2.4兆円以上を売却しました。
このように、当社はリスクポートフォリオの入れ替えと削減をおこなうことで、利益と資本のボラティリティを抑えながら、企業価値を拡大させてきました。今後もグローバルなリスク分散とリスクコントロールにより成長を加速させていきます。

海外事業の拡大を通じたリスク分散 海外 保険料比率の推移*1の表 海外 利益比率の推移*2の表
リスクそのものの削減とコントロール TMNF 政策株式簿価の推移*3の表 金利インパクトの推移*4の表
  • *1元受正味保険料
  • *2事業別利益(年初予想)
  • *32001を100とした場合
  • *4金利が▲50bpとなった場合のESR(移動制約資本控除前)の減少率

株主還元

当社の株主還元は、普通配当を基本とし、利益成長に応じて持続的に高めていく方針です。配当性向につきましては、「修正純利益5,000億円超、修正ROE12%程度を、安定的に達成できた際に、配当性向をグローバルピア水準(50%程度)に引き上げる」としてきた中、利益成長の確信を踏まえまして、配当性向50%への引上げ時期を、2023年度に前倒すこととし、これと整合する形で2022年度の配当性向を48.5%に引き上げた結果、利益成長と合わさり、2022年度は11期連続となる増配を見込んでいます。また、当社の普通配当は5年平均の修正純利益をベースとしていますが、相対的に利益水準が低位であった2018~2020年度が「5年平均」の対象期間から外れることにより、今後は単年度の利益成長以上に配当額が引き上がることになります。このように、当社の配当は堅調な利益成長による配当原資の移動平均的な拡大を背景に、配当性向の引き上げも合わさることで高い成長を実現できるものと考えています。
自己株式取得については、資本水準調整の手段として位置付けており、ESRや市場環境、M&Aや追加的なリスクテイクの機会などを総合的に勘案し判断いたします。なお、2022年3月末のESRは128%と、1年前と概ね同水準でターゲットレンジ(100~140%)内で充実しており、利益水準は2021年度対比で引き上がっている一方、足元の世界情勢や金融市場、事業環境は不透明のため、2022年度の自己株式取得は、年初計画策定時点では、年間を通して1,000億円を機動的に実施していく方針としました。今後についても都度都度の状況をみながら総合的に判断していくことになりますが、当社の企業価値を向上させる様な良質な投資案件があれば実行し、そういった機会に恵まれなければ、資本水準は十分という認識なので、株主還元を実施していきます。

配当成長

  • *12021年5月公表 215円(前年度対比+15円増配)、2021年11月公表 245円(前年度対比+45円増配)、2022年5月公表 255円(前年度対比+55円増配)
  • *2中間配当150円と期末配当150円の合計。なお、期末配当150円は株式分割前の株式数に換算した1株当たりの配当予想額であり、株式分割後の株式数では1株当たり50円となります。

エコノミック・ソルベンシー・レシオ(ESR)の状況

  • *3リスク量は99.95VaR(AA格基準)に基づくモデルで計算

ROEの推移

こうした取組みの結果として、当社の修正ROEはCAPM*4で計算した資本コスト7%を2013年以降上回って推移しています。また、そのボラティリティも低く抑えられるようになってきており、ROEの水準もその安定性も、グローバルピアに近づきつつあります。今後も規律ある資本政策を通じて、資本の健全性を維持しつつ、資本効率を安定的に向上させていきます。

  • *4リスクフリー・レート+β(個別資産の市場全体に対する感応度)×マーケットリスク・プレミアムにより、投資家が期待するリターンを算出する手法

修正ROEは資本コスト7%を上回って推移

ROEの安定的な向上

ROTE:当社は修正ROE、ピアは財務会計ベースで2018-2021の平均値
ピア: Allianz、AXA、Chubb、Zurich
(出典)Bloomberg

リスクベース経営(ERM)

リスクベース経営(ERM*1)のフレームワーク

当社グループでは、中期経営計画を推進していくための経営基盤として「リスクベース経営(ERM)」に取組んでいます。具体的には、「リスク」・「資本」・「利益」の関係を常に意識し、リスク対比での「資本の十分性」や「高い収益性」を実現することにより、企業価値の持続的な拡大を図っていきます。

  • *1Enterprise Risk Management

東京海上グループのERM態勢

当社グル-プを取巻くリスクは、グローバルな事業展開の進展や経営環境の変化などを受けて、一層多様化・複雑化してきています。また、不透明感が強く、変化の激しい昨今の政治・経済・社会情勢においては、新たなリスクの発現を常に注視し適切に対応しなければなりません。こうした観点から、当社ではリスク軽減・回避などを目的とした従来型のリスク管理にとどまらず、リスクを定性・定量の両面のアプローチから網羅的に把握しています。

ERMサイクル

定性的リスク管理

定性的リスク管理においては、環境変化などにより新たに現れてくる「エマージングリスク」を含めたあらゆるリスクを網羅的に把握して経営に報告する態勢としており、グループを取巻くリスクについて随時経営レベルで論議を行っています。こうして把握したリスクについて、経済的損失額や発生頻度といった要素だけでなく、業務継続性やレピュテーションの要素も加えて総合的に評価を行い、グループ全体またはグループ会社の財務の健全性、業務継続性などに極めて大きな影響を及ぼすリスクを「重要なリスク」として特定しています。特定した重要なリスクについては、後述する定量的リスク管理プロセスにより資本の十分性を検証すると共に、リスク発現前の制御策およびリスク発現後の対応策*2を策定し、PDCA管理を行っています。

  • *2リスク発現前の制御策としてマーケット環境や規制動向も踏まえたモニタリングやリスクの集積管理などを、リスク発現後の対応策としてマニュアル(事業継続計画を含む)整備や模擬訓練などを実施しています。

エマージングリスクの洗い出しと重要なリスクの特定プロセス

エマージングリスク:環境変化などにより新たに現れてくるリスクであって、従来リスクとして認識されていなかったもの、或いは、リスクの程度が著しく高まったもの グループの「エマージングリスク」の候補:前年度のエマージングリスクおよびその候補 各事業部、主要グループ会社のエマージングリスク 新たに洗い出したエマージングリスクの候補などをスクリーニング(影響度、対応状況、リスクの高まりを踏まえスクリーニング) グループの「エマージングリスク」 重要なリスク:財務の健全性、業務継続性などに極めて大きな影響を及ぼすリスク グループの「重要なリスク」の候補:前年度のグループの重要なリスク グループのエマージングリスクのうち影響度の大きなリスクなどをマトリックス評価による特定(「損害規模」×「頻度・蓋然性」のマトリックス評価による特定) グループの「重要なリスク」

エマージングリスクの例

エマージングリスク 主な想定シナリオ
人材の獲得競争激化 最新のIT・AIスキルを持った人材や優秀な新卒社員の獲得競争が激化するリスクおよびコロナ禍による勤務形態の多様化等により優秀な人材が流出するとともに採用が困難になるリスク
革新的新技術の制御不能リスク 革新的新技術について、それらに対する制御が不十分なために利用企業で損害や第三者を巻き込む事故が発生・増加するリスク
医療・生命工学の革新的な進化 がん診断技術や遺伝子診断技術が革新的に進化し、それに伴って医療費が増加するリスク
世界的に広がる人権保護に関するリスク 世界的な人権意識の高まりや経済安全保障の取組みにより、意図しないかたちでステークホルダーの人権侵害等を行ってしまい、その結果として社会的批判を受け、また、特定の国や地域において事業展開に制約を受けるリスク

2022年度の重要なリスクと主な想定シナリオ

重要なリスク(2022年度) 主な想定シナリオ
国内外の経済危機、金融・資本市場の混乱
  • リーマンショック級の世界金融危機が発生し、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
  • ウクライナ情勢の更なる悪化・長期化やその他地政学リスクの顕在化等により金融・資本市場の混乱が生じ、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
日本国債への信認毀損
  • 政府の信用力低下により日本国債が暴落し、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
巨大地震
  • 首都直下地震の発生により、多額の保険金支払が発生する。また、当社グループの事業継続に重大な影響が生じるほか、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
  • 南海トラフ等の海溝型巨大地震により、多額の保険金支払が発生する。また、当社グループの事業継続に重大な影響が生じるほか、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
巨大風水災(注)
  • 日本で巨大台風や集中豪雨による大規模な風水災害が発生し、多額の保険金支払が発生する。また、当社グループの事業継続に重大な影響が生じる。
  • 同一年度に複数の巨大ハリケーンが米国東海岸に上陸し、多額の保険金支払が発生する。
火山噴火
  • 富士山の大規模噴火による多量の降灰により、広範囲で交通網寸断、停電、通信障害等が発生し、首都機能が麻痺する。また、当社グループの事業継続に重大な影響が生じるほか、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
パンデミック
  • 新たな感染症の蔓延により多くの人が亡くなり、多額の保険金支払が発生する。また、当社グループの事業継続に重大な影響が生じるほか、当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
  • 現在の新型コロナウイルスの感染の状況が数年間継続し、世界経済が低迷する。当社グループ保有資産の価値が大幅に下落する。
革新的新技術による産業構造の転換
  • コネクティッドカー、自動運転、カーシェアリング、電気自動車等の普及により、自動車保険を中心に収益が減少する。
  • 異業種の企業が保険業界に新規参入し、個人マーケットを中心に当社グループの営業基盤を侵食することで、収益が減少する。
  • 当社グループがデジタルトランスフォーメーションやwith/afterコロナ時代の環境変化への対応の遅れから競争優位性を失い、収益が減少する。
サイバーリスク
  • サイバー攻撃により当社グループのシステムや販売チャネルのシステムで障害が発生し、当社グループの事業継続に重大な影響が生じる。また、レピュテーショナルリスクの顕在化によって企業価値を毀損する。
  • 顧客企業においてサイバー攻撃による被害が急増し、多額の保険金支払が発生する。
テロ・暴動
  • 当社グループの重要拠点近くで大規模なテロや暴動が発生し、当社グループの事業継続に重大な影響が生じる。
コンダクトリスク
  • 当社グループや保険業界の慣行が世間の常識と乖離して不適切な企業行動とされ、レピュテーショナルリスクの顕在化によって企業価値を毀損する。
法令・規制への抵触
  • 当社グループの取引きが国内外の法令・規制に抵触し、監督当局に対して多額の課徴金や和解金の支払いを余儀なくされる。また、レピュテーショナルリスクの顕在化によって企業価値を毀損する。
  • (注)気候変動の影響により頻発・激甚化する可能性がある。

定量的リスク管理

定量的リスク管理においては、最新の知見に基づくリスクモデルを使用したリスク量の計測やストレステストの実施を通じて、格付の維持および倒産の防止を目的として、保有しているリスク対比で資本が十分な水準にあることを多角的に検証しています。
具体的には、リスクをAA格相当の信頼水準である99.95%バリューアットリスク(VaR)で定量評価し、実質純資産*1をリスク量で除したエコノミック・ソルベンシー・レシオ(ESR)の水準により、資本の十分性を確認しています。99.95%VaRのリスク量とは、2000年に1回の頻度で発生するリスクが顕在化した場合の損害額を意味しますが、国内外の多くの保険会社が99.5%VaR(200年に1回)を採用する中、当社グループは、より厳格な基準でリスク量の評価を行っています。
なお、当社グループのESRのターゲットレンジは100~140%としていますが、2022年3月末時点におけるESRは128%であり、資本が十分な水準にあることを確認しています。
更に、定性的リスク管理において特定した「重要なリスク」のうち、経済的損失が極めて大きいと想定されるシナリオ、具体的には「経済的事象」と「自然災害等の保険損害」についてストレスシナリオを想定し、それらリスクが発現した際の波及損失や、複数の重要なリスクが同時期に発現する複合リスクについてもストレステストを実施することにより、事業継続の検証を行い、資本の十分性および資金の流動性に問題がないことも確認しています。また、シナリオテストの高度化も進めており、2020年度からはパンデミックとそれに伴う経済危機の複合シナリオ、2021年度からはパンデミックと大規模自然災害を組み合わせた複合シナリオによる資本十分性も確認しています。加えて、当社グループの健全性に重大な影響を及ぼし得るシナリオを逆算して想定するリバースストレステストも実施し、多角的に検証を行っています。

  • *1財務会計上の連結純資産に、異常危険準備金の加算やのれんの控除等の調整を加えて算出します。

エコノミック・ソルベンシー・レシオ(ESR)の状況

  • *2リスク量は99.95VaR(AA格基準)に基づくモデルで計算

ERM態勢強化に向けた取組み

事業ポートフォリオの改善とリスク評価の高度化

このように当社グループでは定性・定量の両面からERM態勢を整備していますが、激甚化する自然災害や高まる地政学リスク等、将来の環境変化や多様化・複雑化するリスクに対して迅速かつ適切に対応するためには、ERM態勢の一層の強化が必要と考え継続的に取組んでいます。
具体的には、グループ会社の資本効率を評価する手法・プロセスの構築とこれに基づく事業ポートフォリオの最適化に取り組むと共に、サイバーリスクなど定量化が困難なリスクも含めたリスク評価の更なる高度化、米国会計基準の変更(減損会計手法の変更)等のリスク計測モデルへの反映、EaR*3の計測高度化に取り組んでいます。

  • *3Earnings at Risk。数年から数十年に1回の確率で生じるリスクが発現した場合に、その再現期間における収益変動リスクを示す指標。