今年は「スーパーエルニーニョ」? ~2026年の暑さと台風

  • 社会課題・高度化社会
2026年7月13日
  • この記事は東京海上研究所が発行する「SENSOR」を転載したものです。

今年は「スーパーエルニーニョ」になるかもしれない——そんな予測が出ています。スーパーエルニーニョは、過去数十年のなかで数えるほどしか発生していない、極めて珍しい気候現象です。
エルニーニョ現象が発生すると、日本の夏は冷夏になると言われます。では、今年の夏は過ごしやすくなるのでしょうか?そして、気になる台風の動向は?最新の予測情報をもとに考えてみます。

「スーパーエルニーニョ」発生の可能性

気象庁によると、現在、太平洋赤道域では既にエルニーニョ現象が発生しているとみられ、秋にかけて継続する見込みです*1。さらに、一部の予測では、監視海域*2の海面水温偏差が+2.5℃以上となるような状況——俗にいう、「スーパーエルニーニョ」に発達する可能性も指摘されています*3
スーパーエルニーニョは極めて珍しい現象です。気象庁の統計によると、監視海域の海面水温偏差が+2.5℃以上となった例は、1949年以降では4回しか発生していません*4(図1)。
さて、これまでの定説では、エルニーニョが発生すると「日本は冷夏になる」とされてきました*5。これには、夏季に日本を覆う太平洋高気圧が、エルニーニョの影響で弱まるといった要因があります*6。それでは、今年の夏の暑さはどうなのでしょうか。
図1 1949年以降のエルニーニョ現象発生年における
監視海域の最大海面水温偏差

(気象庁資料をもとに、研究所にてグラフ作成)

2026年の夏も高温に注意!

今年の日本では、高温傾向が続いています。2026年春(3-5月)の平均気温は全国的にかなり高く、西日本では統計開始以降で過去最高(1位タイ)の気温となりました*7
そして、気象庁によれば、今年の夏も暑くなると予測されています*8。「アジアモンスーン」と呼ばれる季節風の活発化や、偏西風が北寄りに流れるといった条件により、日本付近が高気圧に覆われやすくなっているためです。また、太平洋高気圧とチベット高気圧が重なる「ダブル高気圧」になる可能性もあります。そして、それらに加えて、地球温暖化の影響も指摘されています*8。「エルニーニョなら冷夏」、そんなかつての定説が、地球温暖化によって覆されてきているのかもしれません。

活発な台風シーズンになるか

エルニーニョが発生すると、積乱雲が発達しやすい領域が東側へ移動するため*6、台風も平年より東側で発生しやすくなることが知られています*9。台風が東側で発生すると、暖かい海面上を長い距離移動しながら発達できるため、強まりやすくなります。
英国の気象機関Tropical Storm Risk(TSR)は、2026年の北西太平洋の台風活動について、2015年以来の活発なシーズンになる可能性があると予測しています*10。2015年は、前回のスーパーエルニーニョが発生していた年でした。もちろん、「スーパーエルニーニョだから台風が強くなる」と単純に言うことはできませんが、上記のようなエルニーニョ時の台風の特徴が、より強く顕在化する可能性があります。

東京海上研究所では、気象庁の過去の台風観測データ、および当研究所独自の台風シミュレーションモデルを用いて、平常年・エルニーニョ発生年・スーパーエルニーニョ発生年の台風強度を比較しました*11
その結果、台風強度は観測・シミュレーションともに「平常年<エルニーニョ年<スーパーエルニーニョ年」となり、エルニーニョが強まるほど、台風も強くなる傾向が確認されました(図2)。
これは、スーパーエルニーニョ年には強い台風が発生しやすい可能性を示唆しています。ただし、今年実際にスーパーエルニーニョが発生するのか、また発生したとしても日本に強い台風が接近するかどうかは不確実性があり、今後の気象状況を注意深く見守る必要があります。

図2では、気象庁が提供するJRA-3Q-COBE再解析データを利用した*12

図2 平常年と比べた台風の
平均生涯最低中心気圧(LMI)の低下幅

左が気象庁による台風観測データを、右が当研究所独自の
台風シミュレーションモデルと過去の気候再現データ(JRA-3Q)
を使用した結果のグラフ。オレンジがエルニーニョ年、
赤がスーパーエルニーニョ年を示す。棒グラフが高いほど、
平常年より平均最低中心気圧が低く、強い台風が発生していたことを示す。
(気象庁資料をもとに、研究所にてグラフ作成)

まとめ

エルニーニョ現象は既に発生しているとみられ、今後スーパーエルニーニョへ発達する可能性があります。そのなかで、活発な台風シーズンが予測されており、研究所の分析では、過去スーパーエルニーニョが発生した年ほど強い台風が多く発生したことがわかっています。以上を踏まえると、今年は強力な台風の発生に一層注意を払う必要がありそうです。
本格的な台風シーズンを迎える前に、ハザードマップや避難場所の確認、住宅の修繕、火災保険の契約内容の点検など、改めて備えを見直してみてはいかがでしょうか。

筆者:東京海上研究所 主任研究員 岡本 卓郎

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