今年は「スーパーエルニーニョ」? ~2026年の暑さと台風
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※この記事は東京海上研究所が発行する「SENSOR」を転載したものです。
今年は「スーパーエルニーニョ」になるかもしれない——そんな予測が出ています。スーパーエルニーニョは、過去数十年のなかで数えるほどしか発生していない、極めて珍しい気候現象です。
エルニーニョ現象が発生すると、日本の夏は冷夏になると言われます。では、今年の夏は過ごしやすくなるのでしょうか?そして、気になる台風の動向は?最新の予測情報をもとに考えてみます。
「スーパーエルニーニョ」発生の可能性
スーパーエルニーニョは極めて珍しい現象です。気象庁の統計によると、監視海域の海面水温偏差が+2.5℃以上となった例は、1949年以降では4回しか発生していません*4(図1)。
さて、これまでの定説では、エルニーニョが発生すると「日本は冷夏になる」とされてきました*5。これには、夏季に日本を覆う太平洋高気圧が、エルニーニョの影響で弱まるといった要因があります*6。それでは、今年の夏の暑さはどうなのでしょうか。
監視海域の最大海面水温偏差
(気象庁資料をもとに、研究所にてグラフ作成)
2026年の夏も高温に注意!
今年の日本では、高温傾向が続いています。2026年春(3-5月)の平均気温は全国的にかなり高く、西日本では統計開始以降で過去最高(1位タイ)の気温となりました*7。
そして、気象庁によれば、今年の夏も暑くなると予測されています*8。「アジアモンスーン」と呼ばれる季節風の活発化や、偏西風が北寄りに流れるといった条件により、日本付近が高気圧に覆われやすくなっているためです。また、太平洋高気圧とチベット高気圧が重なる「ダブル高気圧」になる可能性もあります。そして、それらに加えて、地球温暖化の影響も指摘されています*8。「エルニーニョなら冷夏」、そんなかつての定説が、地球温暖化によって覆されてきているのかもしれません。
活発な台風シーズンになるか
英国の気象機関Tropical Storm Risk(TSR)は、2026年の北西太平洋の台風活動について、2015年以来の活発なシーズンになる可能性があると予測しています*10。2015年は、前回のスーパーエルニーニョが発生していた年でした。もちろん、「スーパーエルニーニョだから台風が強くなる」と単純に言うことはできませんが、上記のようなエルニーニョ時の台風の特徴が、より強く顕在化する可能性があります。
東京海上研究所では、気象庁の過去の台風観測データ、および当研究所独自の台風シミュレーションモデルを用いて、平常年・エルニーニョ発生年・スーパーエルニーニョ発生年の台風強度を比較しました*11。
その結果、台風強度は観測・シミュレーションともに「平常年<エルニーニョ年<スーパーエルニーニョ年」となり、エルニーニョが強まるほど、台風も強くなる傾向が確認されました(図2)。
これは、スーパーエルニーニョ年には強い台風が発生しやすい可能性を示唆しています。ただし、今年実際にスーパーエルニーニョが発生するのか、また発生したとしても日本に強い台風が接近するかどうかは不確実性があり、今後の気象状況を注意深く見守る必要があります。
図2では、気象庁が提供するJRA-3Q-COBE再解析データを利用した*12。
平均生涯最低中心気圧(LMI)の低下幅
左が気象庁による台風観測データを、右が当研究所独自の
台風シミュレーションモデルと過去の気候再現データ(JRA-3Q)
を使用した結果のグラフ。オレンジがエルニーニョ年、
赤がスーパーエルニーニョ年を示す。棒グラフが高いほど、
平常年より平均最低中心気圧が低く、強い台風が発生していたことを示す。
(気象庁資料をもとに、研究所にてグラフ作成)
まとめ
エルニーニョ現象は既に発生しているとみられ、今後スーパーエルニーニョへ発達する可能性があります。そのなかで、活発な台風シーズンが予測されており、研究所の分析では、過去スーパーエルニーニョが発生した年ほど強い台風が多く発生したことがわかっています。以上を踏まえると、今年は強力な台風の発生に一層注意を払う必要がありそうです。
本格的な台風シーズンを迎える前に、ハザードマップや避難場所の確認、住宅の修繕、火災保険の契約内容の点検など、改めて備えを見直してみてはいかがでしょうか。
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*1「エルニーニョ監視速報(No.405)」 気象庁HP: https://www.data.jma.go.jp/cpd/elnino/kanshi_joho/kanshi_joho1.html, 2026/6/10.
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*2北緯5°-南緯5°, 西経150°-西経90°の海域を「エルニーニョ監視海域」と呼び、気象庁は、当該海域の海面水温値の基準値との差の5か月移動平均値が0.5℃以上高い状態で6か月以上持続した場合にエルニーニョ現象の発生としている。なお、スーパーエルニーニョ現象に明確な定義は存在しないが、本稿では基準値差が2.5℃以上高い状態としている。
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*32026 Could See A Historic Super El Niño. Here’s Why., Marshall Shepherd, Forbes. : https://www.forbes.com/sites/marshallshepherd/2026/04/07/2026-could-see-a-historic-super-el-nio-heres-why/, 2026/6/10.
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*4「エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間」 気象庁HP: https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/elnino_table.html, 2026/6/10.
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*5「エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴」 気象庁HP: https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/tenkou/nihon1.html, 2026/6/10.
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*6「エルニーニョ/ラニーニャ現象とは」 気象庁HP: https://www.data.jma.go.jp/cpd/data/elnino/learning/faq/whatiselnino.html, 2026/6/10.
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*7「2026年春(3月-5月)の天候」 気象庁HP: https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/seasonal/202605/202605s.html, 2026/6/10.
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*8「3か月予報(2026年5月19日発表)の解説」 気象庁HP: https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?term=P3M, 2026/6/10.
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*9「季節予報技術資料 第2巻(令和6年度) 第5章エルニーニョ・ラニーニャ現象と台風の特徴」 気象庁HP : https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kisetsu_gijutsu/kisetsu_gijutsu.html, 2026/6/10.
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*10Seasonal Forecasts And Verifications, Tropical Storm Risk : https://www.tropicalstormrisk.com/seasonal.html, 2026/6/10.
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*11台風は発生頻度の低い現象であるため、観測を分析した結果だけでは不確実性がある。シミュレーション結果を統計分析した結果を同時に使用することで、結果の確実性が増す。
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*12Kosaka, Y., S. Kobayashi, Y. Harada, C. Kobayashi, H. Naoe, K. Yoshimoto, M. Harada, N. Goto, J. Chiba, K. Miyaoka, R. Sekiguchi, M. Deushi, H. Kamahori, T. Nakaegawa, T. Y. Tanaka, T. Tokuhiro, Y. Sato, Y. Matsushita, and K. Onogi, 2024: The JRA-3Q reanalysis. J. Meteor. Soc. Japan, 102, 49-109, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmsj/102/1/102_2024-004/_article.2024-004.
筆者:東京海上研究所 主任研究員 岡本 卓郎