気候変動で変わる冬 ~「記録的大雪」のわけと必要な備え
- 社会課題・高度化社会
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※この記事は東京海上研究所が発行する「SENSOR」を転載したものです。
温暖化が進めば雪は減る。多くの人がそう思う一方で、近年「記録的な大雪」のニュースも頻繁に目にします。平年気温は上がっているのに、なぜ雪が強まる場合があるのでしょうか。
実は温暖化が新たな「雪の降り方」を生み出しているのです。今、日本の冬に何が起きているのか。その変化と対策について解説します。
1. 日本を取り巻く気候変動の状況
まず背景として、世界中で進行中である気候変動について、日本付近の様子を見てみましょう。
大気中の温室効果ガス濃度の増加によって、地球全体の平均気温は変動を繰り返しつつ昇温し、2024年には産業革命前比1.5度以上を記録しました*1。気温上昇は世界で均一ではありませんが、日本の気温変化は世界平均を超えています。この要因として、日本近海の海水温の昇温が、世界平均の海水温昇温よりも上昇度合いが高い傾向にあること等が考えられます。これらの変化がバックグラウンドにあり、積雪にも影響すると考えられます。
2. 日本の冬はどう変わってきているのか
それでは、日本の冬はどのように変わってきていて、今後どのようになっていくのでしょうか。
「温暖化が進めば雪は減るのでは?」
多くの人が抱くイメージではないかと思います。実際に、気温が上がれば雪は雨に変わりやすく、積雪量の長期トレンドは全国的に減少が観測されています*2。しかしながら、実際の日本の降雪傾向はそれほど単調に減少するというわけではありません。全国平均では積雪量が減る傾向である一方で、地域によっては特定の条件で「記録的な大雪」が発生するケースはむしろ増加する可能性があるという研究が報告されています*3。温暖化がもたらす気候の極端化により、「平均は減るが、降るときは極端に」という二面性が浮き彫りになりつつあります。このような傾向は雪に限ったことではなく、降雨にも共通する将来傾向となっています。
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気温上昇⇒積雪しにくい環境海面水温上昇⇒大気中の水蒸気量増加や大気の不安定化⇒降れば大雪亜寒帯ジェット気流(上空約10kmを流れる偏西風の本流)の蛇行⇒寒気南下の振れ幅が拡大⇒極域の寒気が日本付近に到達しやすい
この時の気象状況としては、亜寒帯ジェット気流が極東域で蛇行し、北極近くの寒冷な大気が日本付近に流れ込みやすい状況になっていました。また、日本海の海面水温が平年よりも高い状態になっていました。これらの状況はまさに前述のプロセスと重なっています。
さらにこの事例における気候変動の影響を定量的に調べた研究により、気候変動の影響による積雪量増加が6%から10%であったという報告も出ています。*5
3. 極端な大雪の影響と備え
極端な大雪頻度の増加という変化に対し、懸念される影響は多方面にわたります。表1に4項目にわけて列挙しますが、それぞれの項目は密接に関連しています。従来から認識されている影響ですが、極端化する大雪リスクを考慮し対策の再点検と強化が求められます。
このような、想定される大雪の影響に対しては、異なるタイミングにおける備えや対策が必要です。表2では、平時の備えと、直前・最中の対策、また基本対策と事業継続対策に分けてまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 交通やインフラへの影響 | ・高速道路の通行止めや鉄道の運休 ・空港の閉鎖・欠航 ・物流の停滞 ・停電や通信障害 |
| 建物や設備への被害 | ・過大な雪荷重による、建物損壊、倒壊 |
| 経済影響 | ・企業の操業中止や短縮 ・農作物被害 ・観光業への影響 ・除雪費用増加 |
| 健康への影響 | ・雪下ろし中の事故 ・低体温等体調悪化 |
| タイミング | 平時の備え | 直前・最中の備え・対策 |
|---|---|---|
| 基本対策 | ・大雪警報が出たら行動を変える、など気象情報に合わせた対応をあらかじめ決めておく ・備蓄食料品や水、停電対策グッズなどを常備しておく ・車を利用する可能性がある場合、冬用タイヤやチェーンを準備しておく ・落雪が起きそうな箇所などをあらかじめ確認しておく |
・不要不急の外出や車移動を避ける ・安全を確保しつつ除雪作業をこまめに行う ・換気口、排気口がふさがれていないか確認 ・停電や孤立状態を想定し、連絡手段や暖を確保 |
| 事業継続対策 | 大雪の際の対応(安否確認方法、業務縮小判断基準、テレワークの活用など)をBCPに明記し、社員に周知する。 | 大雪警報や交通障害の見通しをふまえ、業務縮小、無理な出社・移動をさせず社員の安全を優先する。安否確認をし、安全を優先したうえで重要業務のみ継続 |
4. まとめ
温暖化により平均的な降雪・積雪は減少しますが、極端な大雪イベントは増加する可能性があります。この「平均は減るが極値は増す」という気候変動の特徴を理解し、従来の経験値にとらわれない新しいリスク管理が求められます。特に企業においては、BCP見直し、サプライチェーンの多重化、テレワーク体制の整備など、総合的な対策検討が急務です。
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筆者:東京海上研究所 主任研究員(東京海上ディーアール株式会社より兼務) 大垣内 るみ