令和8年8月千葉豪雨~浸水被害の概況と都市型水害への備え

  • 社会課題・高度化社会
2026年9月2日
  • この記事は東京海上ディーアールが発行したコラムの記事を一部編集のうえ掲載したものです。
アンダーパスで水没した自動車
(出典:国土交通省関東地方整備局PDL1.0

2026年8月13日から14日にかけて、千葉県では線状降水帯に伴う記録的な豪雨が発生し、各地で浸水被害が発生しました。本記事ではこの豪雨と被害を取りまとめます。なお、本件は8月19日時点の情報に基づきます。

1. 豪雨の概況

日本の南方には、巨大な低気圧性の渦である「モンスーンジャイア*1,iが発生していました。モンスーンジャイアについては、まだ解明できていないことも多いのですが、数年毎程度の頻度では発生するもので、複数の台風との因果関係が報告*2されており、実際の状況と合致しています。同時に、千島列島の東側には高気圧が位置しており、これらの気圧配置の影響で、暖かく湿った空気が関東甲信地方へ継続的に流れ込む状態が続いていました。さらに、日本の上空には「寒冷渦*3,ii」と呼ばれる冷たい大気の塊が存在していました。このため13日から14日にかけて大気の状態が非常に不安定となり、積乱雲が発達しやすい環境が形成されていたと考えられます(図1)。
図1 2026年8月13日18時の天気図*4
東京海上ディーアールにて加筆
これに伴い、千葉県では線状降水帯が発生し(図2)、多くの地点で1時間降水量の観測値が観測史上1位を更新しました(表1)。また、千葉市では、8月14日10時までの24時間降水量が367mmとなり、8月の降水量の平年値の3倍以上の降水量が観測されました*5
この豪雨により、レベル5大雨特別警報やレベル5土砂災害特別警報が千葉県の広い範囲で発表されました。
図2 2026年8月13日17時50分時点の3時間降水量*5
表1 2026年8月13日の1時間降水量の日最大値(速報値)*6
都道府県 市町村 地点 更新した値 12日までの1位の値 統計開始年
mm 時分(まで) mm 年月日
千葉県 我孫子市 我孫子(アビコ) 61 14:30 53.5 2016/7/20 2010年
千葉県 船橋市 船橋(フナバシ) 62 18:43 58.5 2013/10/16 1999年
千葉県 佐倉市 佐倉(サクラ) 97 19:31 68.5 2015/6/23 1976年
千葉県 千葉市中央区 千葉(チバ)* 115 18:48 71 1975/10/5 1966年
千葉県 館山市 館山(タテヤマ)* 94.5 21:53 74.5 1972/9/15 1968年

なお、2026年8月14日までの6時間の積算雨量は千葉市や四街道市において、100年に1回よりも大きい規模であったと推定されています(図3)*7

図3 8月14日0時までの6時間積算雨量の稀さ*7

2. 浸水の概況

1で記載した豪雨によって、千葉県の各地で内水氾濫や外水氾濫が原因とみられる浸水が発生しました。内水氾濫は雨水が下水道の排水能力を超え、用水路やマンホールなどから水が溢れる事象、外水氾濫は堤防からの越水や堤防の決壊により、市街地に水が溢れる事象を指します。今回の豪雨で浸水したとみられる地域は「令和8年8月千葉豪雨に伴う対応 第5回千葉県災害対策本部会議資料」*8より確認できます。

特に今回の豪雨では道路やアンダーパスの浸水など、内水氾濫による浸水が各地で発生したとみられます。千葉市では内水氾濫に対する備えとして、「千葉市雨水対策重点地区整備基本方針」*9(計画期間:2018年~2038年)を策定し、整備重点地区iiiで1時間あたりのピーク雨量を65.1mm、一般地区では1時間あたり53.4mmとして、雨水対策を強化してきました。今回観測された千葉市の1時間降水量は115mmであり(表1)、上記の基本方針で定められた雨量の約2倍もの雨量が観測されました。これにより、各地で排水能力を超過し、内水氾濫が発生したと考えられます。

このような都市部において排水能力を超えて発生する水害は都市型水害と呼ばれます。特に東京都では集中豪雨による都市型水害が過去から多数発生してきました。(東京都における浸水実績は「水害リスク情報システム」*10から確認可能)。都市型水害は河川から離れた地域においても浸水が発生し、短時間で被害が拡大する点が特徴です。

なお、千葉市では雨水出水(内水氾濫)浸水想定区域図が令和8年3月31日に指定され*11、想定最大規模降雨(1時間雨量153mm)が発生した場合の浸水が示されています。しかし、報道等により、今回の豪雨ではこの浸水想定区域外で浸水が発生したことも報告されています。これは、浸水想定区域図で想定される降雨分布や降雨強度が実際と異なるためと考えられます。図4に示す通り、1時間雨量は153mmに達していなくても、ピークだった18時~19時の前後で約30mm、40mmほどの激しい雨が降っていることや22時、23時付近でも約40~50mmの強い雨が降ったことで、浸水想定区域外でも排水が追い付かなかった可能性があります。

図4 千葉における1時間降水量*12(東京海上ディーアール作成)

さらに、今回の豪雨では大網白里市で、外水氾濫による広域的な浸水被害が発生しました。大網白里市の大網駅周辺における浸水推定(図7)と浸水想定区域図(図5・図6)を比較します。図6は大網白里市を流れる南白亀川水系の洪水浸水想定区域図(計画規模)*13であり、今回氾濫が発生した小中川も評価対象に含まれています。図5及び図6から浸水推定図南側(外房線より南側)の浸水範囲は概ね一致するものの、北側の浸水範囲は、浸水想定区域図では浸水範囲外になっています。なお、想定最大規模の洪水浸水想定区域図(図7)*14においても、浸水推定図(図5)に示された一部範囲は浸水想定区域図の浸水範囲外になっています。これは前述の通り、洪水浸水想定区域図で想定される降雨分布と実際の降雨分布の違いが要因として考えられます。また、図6および図7では想定されていない内水氾濫や支川の氾濫が複合的に発生した可能性も考えられます。

図8に示す通り、浸水が発生したとみられる区域(図5)は他の区域よりも低地であり*15、水が集まりやすい地形だったと考えられます。このことから、浸水想定区域外でも、周囲よりも標高が低いような場所では浸水が発生する可能性があることを認識しておくことが重要です。このような場合に備えて、東京海上ディーアールコラム(「水害リスクを身近に感じる読み解き方 ①水の動き方をイメージしよう」)もぜひご参照ください。

図5 大網白里市の浸水推定図*7
図6 南白亀川水系の洪水浸水想定区域図
(計画規模)*13(東京海上ディーアール一部加筆)
図7 南白亀川水系の洪水浸水想定区域図(想定最大規模)*14(東京海上ディーアール一部加筆)
図8 大網駅周辺の標高図
(地理院地図*15より東京海上ディーアール作成)

3. 都市型水害による被害とその対策

2浸水の概況で述べたように、今回の豪雨では、都市型水害が発生した点が特徴的でした。ここでは、8月19日12時までに公表された情報に基づき、都市型水害ならではの被害をまとめ、今後同様の都市型水害が発生した際に、被害を抑えるための対策について紹介します。

3.1. 都市型水害による被害

A)自動車の浸水*16,17,18
都市型水害の顕著な被害として自動車の浸水があり、今回の豪雨でも多数の被害が出ています。8月18日16時時点で、水没した自動車に閉じ込められたことにより、3名の方が亡くなっています。また、8月17日13時時点で、千葉市内だけでも約2,500台の自動車が故障により移動できず放置されており、道路上の放置車両への追突事故も発生しています。

B)地下の浸水*19,20
都市型水害のもう1つの特徴的な被害として、地下の浸水があります。8月18日5時時点で、千葉市の少なくとも12棟のマンションで停電・断水が続いています。電力会社の供給に問題はなく、マンション地下の電気設備が浸水により故障したことが原因とみられています。
また、千葉市内の総合病院では、地下の電気設備が浸水により故障し、停電が続いています。8月18日16時時点で休診しており、再開のめどは立っていません。

3.2. 都市型水害への対策

A)自動車の浸水*21,22,23,24
冠水した道路を走行すると、吸気口からエンジン内部に水が入り込んだり、マフラーから浸水したりすることで、エンジンが停止し、再始動できなくなるおそれがあります。被害を避けるため、アンダーパスや川沿いなど浸水の危険がある場所には近づかないようにしましょう。また、前の車が通過できても自分の車が同様に通過できるとは限らないため、無理に追従しないようにしましょう。
万が一走行中にエンジンが停止した場合は、故障拡大を防ぐため無理な再始動は避け、ハザードランプを点灯して安全を確保し、ロードサービスに連絡しましょう。
何よりも人命が第一です。車内まで水が浸入してきた場合は、速やかに車外へ脱出してください。水圧でドアが開かない場合もあるため、車内に緊急脱出用ハンマーを備えておくことも大切です。

B)地下の浸水*25,26,27,28
今回の豪雨に限らず、都市部では地下街や地下室などが浸水する被害が度々発生しています。地下空間は周辺の雨水が集中しやすい構造となっているため、短時間豪雨に対して特に脆弱であるといえます。こうした地下の浸水は、過去に死亡事故が発生した例もあり、決して軽視はできません。
地下浸水対策として最も一般的なものが止水板の設置です。出入口などの開口部からの浸水を防ぐ効果的な手段ですが、止水版の設置は人の手によるため、あらかじめ設置計画を策定し、日頃から訓練しておくことが重要です。
電気設備は可能な限り高所に設置し、地下設置がやむを得ない場合は防水扉や嵩上げなどの対策を講じることで、停電などの被害を防止できます。
一方、個人としては、豪雨時に地下空間へ不用意に近づかないことが重要です。地下は浸水が始まると急速に水位が上昇し、避難が困難になる危険があります。
また、防災グッズの点検や避難経路の確認、ハザードマップによる危険箇所の把握などにより、豪雨災害に限らず災害全般への備えとなります。

4. 今後の可能性

今回のような豪雨災害は今後も起こりうるのでしょうか。また、気候変動の影響はあるのでしょうか。
まず、気象条件について確認します。モンスーンジャイアは過去にも度々発生している現象です。一方、寒冷渦はジェット気流の蛇行によって頻繁に起きる気象現象です。このため、今回のような気象条件が重なるのは稀とはいえ十分に起こりうる、といえます。
次に、気候変動の影響について考えます。温暖化に伴う大気中の水蒸気量の増加により、極端な降水が強まる傾向は一般的に指摘されています。しかし、モンスーンジャイアや寒冷渦といった個別の現象と気候変動の関連は、研究の蓄積が十分とは言えません。近年、特定の気象イベントの温暖化影響を気候モデルで定量評価する「イベントアトリビューション研究」が注目されており、今回の事例も今後分析される可能性があります。実際、過去の豪雨事例でのイベントアトリビューション研究では、温暖化が降水量増加に寄与していたとの結果も報告されています*29
また、気象庁やIPCC*30の将来予測でも、温暖化の進行により今後、極端な大雨の頻度・強度がさらに増加する可能性が指摘されています。こうした傾向を踏まえ、今後も同様の豪雨がいつどこで発生してもおかしくないという意識を持つことが求められます。

5. まとめ

2026年8月13日から14日にかけて発生した令和8年8月千葉豪雨に関して、豪雨をもたらした気象条件や浸水の状況と浸水想定区域図との比較、被害の概況をまとめ、今後の可能性について考察しました。今回の豪雨事例から以下の点が示唆されます。

  • 今回のような気象条件は過去にも発生しており、今後も同様の豪雨がいつどこで発生してもおかしくない
  • 温暖化の進行により、極端な大雨の頻度・強度がさらに増加する可能性がある
  • 実際の降雨は浸水想定区域図で想定される降雨とは異なるため、浸水想定区域外でも浸水が発生する可能性があり、特に標高が低い場所では浸水に注意が必要
  • 都市化が進んだ地域では、自動車の水没や地下施設の浸水など、都市型水害特有の被害が今後も発生する可能性がある

今一度水害リスクを考えてみてはいかがでしょうか。

東京海上ディーアールでは、水害リスクの読み方を解説した記事や水害リスク情報をまとめた記事、実際の洪水事例とハザードマップを比較した記事などを発信しています。
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事例から見る洪水ハザードマップの読み方(上級者向け) (2023年9月1日)

東京海上日動では、防災・減災に役立つ知識をご紹介しています。
あしたの笑顔のために~防災・減災情報サイト~ 竜巻・集中豪雨

参考文献

脚注

  • i
    モンスーンジャイア:盛夏期の日本の南方海上に発生する巨大な反時計回りの循環
  • ii
    寒冷渦:低気圧の一種。特に対流圏の中層~上層(地上約5000~10000m)に発生する。
  • iii
    整備重点地区:大雨時に床上浸水が発生するなどの浸水リスクが高く、被害が発生した場合に、経済的損失が大きい都市機能が集積している地区
  • iv
    IPCC: 気候変動に関する政府間パネル

筆者:東京海上ディーアール 主任研究員 森口 暢人、研究員 渡邊 大樹、上級主任研究員 大垣内 るみ、主任研究員 富岡 拓海

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