新エネルギー革命のスタンダードとなる保険の担い手として
- 保険・リスク関連インサイト
- サステナビリティ
- 社会課題・高度化社会

イングランド北東部の海沿いの町ブライス、この人口40,000人足らずの町の名を聞いて、世界的に重要な出来事を連想する人はほとんどいないでしょう。しかし、エネルギー分野に詳しい人にとっては、ノーサンバーランド州のブライスといえば、20世紀の最も重要な2つの技術革命と強い結びつきのある場所なのです。
1961年当時、ブライスは炭鉱と造船の拠点でした。英国で最も栄えていた港の一つであり、毎年600万トンを超える石炭がこの港を通って運ばれていました。その後、第一次産業革命に起因して燃料輸出が減少したことで世界のエネルギー市場におけるブライスの役割は低下しました。
それから約半世紀後、新たなエネルギー革命を牽引する場所として、再び脚光を浴びることになるのです。
2000年、発電量2メガワットの実証プロジェクトとして、英国初の商用洋上風力発電所がこのブライスで始動しました。当時としては、世界最大級の2基のタービンは、約1,500世帯に十分な電力を供給できる発電容量を有し、洋上風力の技術のテスト施設として活用されました。東京海上グループであるGCube社*1は、この先駆的プロジェクトの稼働を支えるため、他に例のない初の保険を提供しました。
今年は、欧州で風力発電が石炭火力発電を初めて上回る年になると予測されています。GCubeは現在、再生可能エネルギー事業の世界の大手10社のうち8社に保険を提供し、38カ国の2,000件を超えるプロジェクトをサポートしています。ブライスおよび世界各地のテスト施設において描かれた設計図は、新たな「グリーン産業革命」の基盤となりました。
2024年は、ネットゼロへの道のりにおいて、世界のエネルギー関連のCO2排出量がピークを迎えた可能性があると言われる、極めて重要な年でした。
この道のりを陰で支えるパートナーとして、新たなテクノロジーやプロジェクトで世界をより良い場所へと変えるための力となってきたのが、この分野に特化した専門保険でした。ネットゼロへの動きは現在、世界中で強まっています。あらゆる業界で、企業は事業活動の脱炭素化と、グリーンビジネスの機会活用に力を入れています。
それでも、まだ課題は山のように残っています。脱炭素に必要な活動は、全世界で物的資産において年平均9.2兆ドルもの支出の再配分を引き起こそうとしていますが、これは過去100年で最大の資本再配分になります。そこで専門保険が果たす役割はきわめて重要になります。ただし、そのためにはリスク移転の市場が安定性を備え、これまで発展を妨げてきた変動性を減らすように、進化せねばなりません。
現状は、投資家が慎重にならざるをえないために、非常に多くのプロジェクトが、前に進めない状況にあります。企業が自社の構想を実現するために必要な保険カバーを得られないことが、イノベーションの足枷となってしまっています。また保険コストの変動可能性が大きいために、保険会社は、大きな変革をもたらすような保険の引受けや、新技術をサステナビリティを高める製品へと成長させる保険の引受けを積極的に行えないということも起こっています。
「保険には、その時々の最も大きな問題であっても解決できる力がある」、このような信念が東京海上グループの企業文化の中心にあります。そしてこの信念は、150年近くに及ぶグループの進化の原動力となり、グローバルな成長の支えとなってきました。東京海上グループは、お客様の移行の取り組みを、あらゆる段階でサポートするために求められる、事業規模やグローバル展開力、影響力、専門能力を兼ね備えた数少ないグローバル保険会社の一つとなっています。
グリーン産業革命は、私たちの時代の重要な課題です。これまで四半世紀以上にわたってGCubeは、エネルギー転換の最前線に立ってきました。イノベーションの促進、投資の実現、リスクの軽減、そして保険金の支払いといったGCubeの活動は、すべてこのセクターが繁栄していくための取り組みです。ブライスの町で始まった新たなエネルギー革命を、グローバルな脱炭素化の先頭に立って推進してきたのがGCubeです。そしてこの動きに重点を置くセクターやコミュニティは、増加の一途をたどっています。
保険業界には、事業収益と道徳的責務の両方の観点から、これまで以上に取り組んでいくことが期待されています。つまり、企業が移行の過程のあらゆる段階で、脱炭素化の方策を実行し、より効率的にカーボンニュートラルの取り組みを実行できるようにすることが期待されています。この機会を逃してしまうことは、急成長するこの分野でのポジションや、お客様との関係、そして当社が長期的で共生的かつ持続的な成長を遂げられる可能性があるさまざまな産業との結びつきを危うくすることに他なりません。
-
*1当社子会社HCC Insurance Holdings, Inc.を通じ、再生可能エネルギー事業(風力、太陽光、水力発電等)に関するリスクに特化した保険引受を行う保険総代理店
Benjamin Kinder, Chief Underwriting Officer for Marine, Energy and Renewables, Tokio Marine HCC International
Benjamin Kinderは、エネルギー保険市場で25年の経験を持ち、現在はTokio Marine HCC Internationalにおいて、海上、エネルギー、再生エネルギー担当のチーフ・アンダーライティング・オフィサーを務めています。
またBenjaminは、東京海上ホールディングスのサステナビリティ委員会の委員として、グループ全体の多様なESGの取り組みのイニシアティブの開発と提供を担当しています。ACII(Advanced Diploma in Insurance)の資格を有するとともに、英国Henry Business SchoolでMBAを取得しており、同校での学びは、組織のESGの実践に影響を与えています。
Benjaminは、保険分野での仕事に加えて、Ashford Placeという慈善団体の理事長を務めており、同団体は、ロンドン北西部でメンタルヘルス問題を抱える人々への支援を行っています。